コロナ禍を逆手に…介護業界の魅力、動画配信でPR

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 介護や福祉の仕事の魅力を一丸となって発信しようと、福岡県内の関係団体が年1回、実施しているイベント「ふくおかカイゴつながるプロジェクト」。今年はコロナ禍もあり、今月10日にオンラインで開催された。介護・福祉職が職場や団体の枠組みを超え、連携して研さんやPRを行う全国の先進例や、現場の多様な職種一人一人にクローズアップした動画などを紹介。配信は約7時間に及び、人材育成や離職防止に向けた思いが、ひしひしと伝わる企画だった。

 高齢化が進む一方、介護職を目指す学生は減少傾向にあることから、イベントは介護や福祉のイメージ向上が目的。官民で実行委員会を組織し、昨年は福岡市・天神で開いていた。

 「福岡以外の関係者とも連携して介護に携わる人にエールを送り、業界全体での発信につなげていくのが狙い。1回ごとに集客する会場型のイベントと比べて、逆にオンラインだからこそ全国とのつながりをアピールできたのでは」。実行委員長で福岡介護福祉専門学校校長の小笠原靖治さんは手応えを感じている。

居住地外で学びを

 先進的な実践発表があったのは、福岡市で多職種による定期的なセミナーを開いている「福岡福祉向上委員会」(大庭欣二代表)主催のオンラインセッション。全国的に活動している東京都のNPO法人「Ubdobe」(ウブドベ)の理事2人が登壇した。

 同法人は、学生でも現場の職員でも、自分が住む地域以外で福祉や地域づくりが学べる「福祉留学」事業を今年から実施。全国22の法人・事業所が協力し、年齢制限はなく、期間も1日から中長期の滞在まで、希望者に応じてマッチングしている。理事の中浜崇之さんは「その土地ならではの福祉を学び、暮らしの豊かさについても考えることができる。福祉職の新たな価値を意識でき、地元での働き方にも生かせる」と述べ、「外」での体験やコミュニケーションが、仕事の継続意欲につながっていく利点を強調した。

価値高める仕掛け

 同じく理事の貞松徹さんは、長崎県長与町の社会福祉法人「ながよ光彩会」の業務執行理事を務める。特別養護老人ホームなどを営む傍ら、施設に併設する形で1階部分に、地域住民との交流拠点施設「みんなのまなびば・み館」を開設。入居者による生け花教室や、施設の職員から暮らしに役立つ介護技術を学ぶワークショップなどを開いており、一般の人も含め、お互いを身近に感じられる空間となっている。

 「介護現場で働く職員の『価値』をよりプラスの評価に変えていくため、一人一人をプロデュースするつもりで、やりたいことができる職場環境づくりに努めている」と貞松さん。経営者側の心構えも訴えた。

 司会を担当した大庭代表は、業界の現状を「自身の仕事をネガティブに捉え、周りにもそんな発信をする向きも多い」と指摘した上で、「福祉の枠組みを超えた創造的な活動と、それを効果的に表現し、発信していくことの大切さが伝わったのでは」と総括する。

プロとしての思い

 介護福祉士を目指す学生が動機などを語ったり、現場の職員が職場を紹介したりする手作り動画も数多く配信された。

 福岡市老人福祉施設協議会に所属する事業所の50代以下のメンバーでつくる「次世代委員会」は、市内の特別養護老人ホームで働く計7人を、テレビ番組さながらの音楽やナレーション、インタビュー形式で紹介する動画を作成。

 「子どものころ、支援が必要な同級生の力になれなかったので、理解のある人になりたかった」「利用者や家族にありがとうと感謝され、やりがいを感じる」「プロフェッショナルとは、相手を思いやれること、自分の限界を決めないこと」…。介護福祉士や生活相談員、ケアマネジャー、看護師、管理栄養士、裏方の事務スタッフなどが思いを語り、中には感極まって涙ぐむ人も。メンバーがそれぞれ手分けして撮影し、映像化や編集には九州大芸術工学部の学生も協力。約1週間で作り上げたという。

 委員長の竹尾純さんは「施設は何となく閉ざされた環境にあるので、少しでも中のことを知ってほしかった。利用者さんにはもちろん、今の子どもが大人になったときに良かったと思えるような介護、福祉の未来をつくっていきたい」と意気込みを語った。 (編集委員・三宅大介)

 【ワードBOX】ふくおかカイゴつながるプロジェクト2020
 福岡県介護福祉士養成施設協議会、福岡市老人福祉施設協議会、同県や市の社会福祉協議会、市などが主催・共催に名を連ね、介護や福祉職の魅力を発信するイベント。人材育成や離職防止を目的に昨年から本格化した。今月10日にオンラインで開催。配信は今もフェイスブックページ「ふくおかカイゴつながるプロジェクト」内で公開中。

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