「チョーク1本」の教師も本気に ICT教育促進  文科大臣賞の田川市

西日本新聞 筑豊版 吉川 文敬

 福岡県田川市が進める電子黒板などを使った教育の情報化(ICT教育)への取り組みが注目されている。今年5月には全国ICT教育首長協議会が主催する本年度の「日本ICT教育アワード」で最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。先進的なICT教育の実現は、理念構築といった目標の明確化に加え、教師の技量底上げに向けた日常的な研修会や公開授業など地道な取り組みの積み重ねがあった。

 「総理の所信表明演説に対して、新聞各紙の評価はさまざまです」

 今月中旬、伊田中の公民の授業で、野口早紀教諭(33)は、電子黒板で各紙の社説を紹介した。画面を拡大したり、ネットニュースを映したりしながら、さまざまな意見やコメントがあることも解説した。

 一方、黒板にはマスメディア、世論などキーワードを板書。野口教諭は「電子黒板だけだと分かりにくいという生徒もおり、板書も併用している」と話した。

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 情報技術を使って問題解決ができる人材育成を目指す同市は2016年、ICT教育に詳しい鹿児島大の山本朋弘准教授(教育工学)を招請。山本准教授は「まず組織作り。つぎに理念」と助言した。教育長を本部長とする市ICT教育推進本部を設置し、17年3月、市教育情報化ビジョンを策定した。分かりやすい授業や情報活用能力の育成などを目標に掲げた。

 市教育委員会は同年11月、市内全小中学校の各教室に、電子黒板(1台50万円程度)などの約9400万円分の機材を一気に設置したが、急速なICT化に反対の声もあった。

 伊田中の亀谷勝弘校長は「教師はチョーク一本で勝負するもんだ、と話すベテランもいた」と振り返る。市教委は、教師による差をなくすため、日常的に教員研修や公開授業を実施。各学校が取り組んだ講義事例集をまとめた冊子も作り、教師によらない授業の平準化に注力した。

 公開授業には効果があり、消極的だった「チョーク一本」の教師たちも本気になったという。「授業がうまい先生は、ICT授業もうまい。良い化学反応が生まれた」と亀谷校長。

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 伊田中の美術の授業。1年の原優理香さん(13)は「イメージ通りに形が変えられるから楽しい。めっちゃ集中します」と声を弾ませた。通常は粘土などを用いて造形するが、3DCG(3次元コンピューターグラフィック)を駆使。生徒たちは竜や猫、人を作成した。佐藤行彦教諭(51)は「最新ソフトもパソコンが古いと十分に生かせない。新型タブレットに期待したい」と話した。

 田川市は来年2月までに、新型タブレット端末を全児童生徒1人に1台ずつ配布予定。市教委は「電子黒板のノウハウを生かし田川のICT教育を洗練さたい」と意気込む。山本准教授は「機材先行ではなく、理念や目標から構築したことが大臣賞受賞の大きな要因。今後は子どもの主体的学びにどう生かすかが課題だ」と話した。 (吉川文敬)

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