審判前の攻防痛み分け トランプ得意戦術展開 バイデン反撃材料準備

西日本新聞 総合面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】米大統領選に向け、最後の直接対決となった22日の候補者討論会。世論調査でバイデン前副大統領にリードを許しているトランプ大統領は、バイデン氏の息子に関する醜聞を一方的に責め立て「言うだけで何もできない既存政治家」と激しく非難。個人攻撃をたたみかけて大逆転した4年前の再現を狙ったが、バイデン氏もトランプ氏の納税を巡る疑惑などを追及し「トランプ氏こそ口だけ」と猛反撃。互いに決定打を欠き、痛み分けの結果に終わった。

 「私はオバマ(前大統領)とあなたがひどい政権運営をしたから(前回大統領選に)立候補したんだ」。トランプ氏は討論会で、バイデン氏をこう批判。上院議員を含め40年以上、国政の舞台に立ってきたバイデン氏に、国民が嫌う「既存政治家」のレッテルを貼ろうと躍起となった。

 9月の討論会では再三にわたりバイデン氏の発言を妨害し、攻撃姿勢を前面に打ち出したが、逆にバイデン氏の支持率上昇を招く要因に。11月3日の投開票まで反転攻勢の時間が限られる中、トランプ氏が狙うのは4年前の選挙終盤で見せた大逆転劇だ。

 相手のベテラン政治家を「守旧派」と印象付け、実業界出身の自身の実行力と対比。さらに一方的な個人攻撃を繰り返す-。この日も不規則発言を控える中で、彼が得意とする戦術を展開した。

 特に、バイデン氏の息子に関する中国やウクライナとのビジネスを巡る金銭疑惑をしつこく攻撃。疑惑には不明な点が多いものの、バイデン氏を「汚職政治家」呼ばわりすることで有権者に少しでも不信感を抱かせ、イメージダウンを図ろうとした。疑惑について主要メディアはほとんど報じていないだけに、視聴者の関心を引く可能性はある。

 これに対し、バイデン氏は「息子は金もうけなどしていない」と反論し、自身の関与も含めて真っ向から否定。逆に、米大手紙が最近「トランプ氏が中国に銀行口座を保有している」と報じた問題などを持ち出し、個人攻撃を巧みにかわす用意周到さを見せた。

 ただ、バイデン氏が地球温暖化対策を巡る議論の中で脱石油エネルギーの実現を声高に訴えたことで、エネルギー産業が盛んな激戦州の有権者から反発を受ける懸念もある。とはいえ心配された大きな失言はなく、高齢に伴う認知能力の低下をうかがわせる場面もほとんどなかった。

 「ありがとう」。討論会前、司会者を民主党寄りと批判していたトランプ氏だったが、終了後は紳士的に対応する余裕も見せた。だが、バイデン氏に決定的なダメージを与えたとは言い難く、保守・リベラル双方のメディアは「支持動向は大きく変わらないだろう」と相次いで報道。既に約5千万人が事前投票を済ませ、態度未定の有権者は4%ほどしか残っていないと指摘される中、依然としてトランプ氏は苦しい立場にある。

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