タイの屋台はスパイ?ドラえもん? デモ現場最速到着、SNSで話題に

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】タイのデモでは従来、参加者目当ての屋台やバイクタクシーが名物だ。今回のデモが過去と違うのは若者が会員制交流サイト(SNS)を駆使して頻繁に場所や時間を変更すること。業者もいち早く会場に駆け付けようと懸命で、当局や報道陣はおろかデモ隊より早く現場に到着するつわものも。SNSで格好の話題になっている。

 21日夕、バンコクの戦勝記念塔前。デモ会場になることが直前にSNSで告知されたばかりだったので人はまばらだったが、既に多くの屋台が軒を連ねていた。

 この道10年、揚げ串の屋台を営むボルさん(36)もその一人。串を買ったデモ団体の若者スタッフがふざけて「スパイ CIA」と米中央情報局の名を書いた紙が店頭に掲げてある。

 「以前のデモは1カ所に長時間座り込むだけだから楽だったけど、今回は急に発表されるから情報収集が大変だよ」。携帯でデモ団体のSNSを常にチェック。下ごしらえを早めに済ませ、すぐにバイクで急行できるよう準備を整える。「もちろんスパイじゃないけど、屋台独自の情報ネットワークはあるよ」。デモがあれば売り上げは通常の7割増。「俺は若者も政府も、どっちの味方でもない。真ん中。誰が客でもできるだけ早く来るだけ」

 屋台の“早すぎる到着”をSNSやメディアが取り上げ、話題に。すぐに「CIA」は屋台を示す流行語となり、日本の人気漫画「ドラえもん」で登場する「どこでもドア」を使って移動しようとする屋台の加工画像も広く拡散している。

 バンコク市民の足、バイクタクシーもデモに欠かせない。いつもの渋滞がさらに悪化するからだ。デモ参加者を無料送迎したり、体調を崩した人を病院に搬送したりする活躍の様子が報じられている。

 21日夜もデモ隊は急きょ約2キロ離れた首相府への行進を発表。記念塔周辺に待機するバイクタクシーに、先回りしたいデモ隊や報道陣が殺到した。

 記者も助手とともにバイクタクシーに乗った。だが、首相府に続く交差点はどこも警官隊が封鎖。50代の男性運転手は「マイペンライ(大丈夫)」と携帯を見て、居合わせた他のバイクタクシー運転手らとも何か話した後、ある病院に入った。そのまま裏側に通り抜けると閉鎖されていない道路に出て、まだ人の少ない首相府近くに着くことができた。

 2人で計100バーツ(約330円)と良心的な料金。上乗せを支払い、礼を言った。運転手は黙って次の現場に向かっていった。

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