「川まで奪わないで」人吉市ではダム反対多数 熊本知事の意見聴取会

西日本新聞 社会面 古川 努 中村 太郎

 7月豪雨後の治水策に民意を反映させるため、熊本県の蒲島郁夫知事が球磨川流域で開いている意見聴取会が24日、同県人吉市であり、計約100人が参加した。豪雨による犠牲者20人、家屋被害3千戸と最大の被災地であり、是非論が再燃している川辺川ダムによる治水の最大受益地とされるが、多くはダムに反対した。「川辺川は宝」。清流への愛情と行政への不信感が浮き彫りになった。

 「知事さん、ダムを造らないで」。地元で生まれ育った木本千景(ちひろ)さん(34)は切々と訴えた。川辺川は遊び場であり、アユ漁や川下りができる観光資源であり、古里の原風景。学生だった2008年、ダム建設を「白紙撤回」した蒲島氏のニュースを東京で見て「うれしくて泣いた。だから、ここに戻って子育てし、幸せな生活を送っています」。川遊びする長男(4)の写真を蒲島氏に向けた。

 「多くを失った被災者から川まで奪わないで」。他の参加者の反対意見にも川への深い愛情がにじんだ。

 ダムへの拒否反応も強い。「ヘドロが増えた」「臭い」などとやり玉に挙がったのは球磨川上流の県営市房ダムだ。7月豪雨時には防災効果を発揮したが「今回の水害は市房ダムの放流が原因という声が多い」との意見も出た。「川辺川ダムが存在すれば人吉市の浸水範囲は6割減った」という国の検証結果についても、複数の市民が「信用できない」と述べた。

 蒲島氏は会合後、報道陣に対し、ダム反対論の多さに関して「不信感の強さを感じた。丁寧に説明すべきだと感じた」と話した。

(古川努、中村太郎)

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