「温泉の思い出忘れないで」107日ぶりのメッセージ 被災旅館の電脳女将

西日本新聞 社会面 井中 恵仁

 応援してくださった皆さま。本当にありがとうございます-。7月の記録的豪雨で犠牲となった家族が経営していた大分県由布市湯布院町、湯平温泉の旅館「つるや隠宅」の公式キャラクター「電脳女将(おかみ)・千鶴」が、107日ぶりにツイッターでメッセージを伝えた。亡くなった旅館の長男渡辺健太さん(28)と共に制作に関わった有志5人が再び動かした電脳女将は、家族の思いをくんだ感謝の言葉を語り掛けている。

 旅館は健太さんと母、祖母が経営。7月の豪雨の際、父を含む4人で避難中、近くの川に車ごと流され、4人とも遺体で見つかった。アニメ好きの健太さんは4年前に「千鶴」を考案し、積極的に湯平温泉の情報を発信して遠方からも多くの観光客を呼び寄せた。しかし、一家の行方が分からなくなった7月8日以降、更新は途絶えたまま。関係者によると、旅館の廃業も決まった。

 「このまま悲しい存在として終わらせることを健太さんは望んでいないはず」。一緒に「千鶴」を生み出した東京都の会社経営者や大分県出身の声優種崎敦美さん、動画編集者らが家族の訃報を知り、メッセージ発信の準備を進めてきた。遺族も趣旨に賛同し、任せてくれたという。

 「つるや隠宅での楽しかった思い出、どうか忘れないでください」「疲れたときは休んでもいいと思います。私たちが愛しているこの町は、皆さんを温かく迎えます」

 動画は4分42秒。22日に種崎さんのアカウントで発信された。見た人たちは「泣いた。つるや隠宅があった場所に必ず行きたい」「早く温泉街が復興できることを祈っています」などと次々に投稿している。

 湯平温泉観光協会の麻生幸次会長(51)も動画を見て胸が熱くなり、誠実な健太さんを亡くした喪失感の大きさを痛感した。「健ちゃんの志を継ぎ、千鶴さんの存在を継承していきたい」と話した。

(井中恵仁)

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