タイには「選挙の前日から…

西日本新聞 オピニオン面

 タイには「選挙の前日から酒の売買禁止」との決まりがある。「酒食での票の買収を防ぐため」らしいが、「酔っぱらって投票に行かなくなるから」との説の方が当を得ていると思える

▼規則は日本人駐在員にも適用される。けれど内緒で酒を提供する店はある。もっとも、中身が分からないようにコップではなく湯飲みを使用。渋茶をすするがごとくビールを口に運ぶ

▼ユニークな規則の一方で、怖いのは王室王族への不敬罪の存在である。外国人とて例外ではない。「次の国王は」と話すことさえ「現国王の死を前提にしている」ととがめられ、長い懲役刑を受けることもある

▼誰もが言葉を濁してきた王室批判が今、公然と叫ばれているという。デモ隊が王室の車列を妨害し、国王を名指しで非難したと本紙特派員が報じている。民主化を求める政治運動は過去にもあったが、明確に王室へ声を上げたのは前代未聞だろう

▼2016年に88歳で死去したプミポン前国王は、慈悲深い「国父」として尊敬を集めた。経済危機の際には日本から学んだ「足るを知る」精神を訴え、国民の心を団結させた

▼それなのに息子の現国王である。数々の奇行や女性問題は知れ渡り、資質が疑問視される。出来損ないの湯飲みではなく、ちゃんとしたコップを用意しろ。人々の怒りの根源はこうしたトップや体制への不満だろう。無論、かような例えは不敬罪相当であるが。

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