「家を出たい」寝耳に水の妻の言葉…夫の出した意外な結論

西日本新聞

復刻連載・夫婦でいる理由(わけ)<9> 週末婚(上)

 金曜日の夜、福岡市・中洲のネオン街のにぎわいには目もくれず、卓さん(46)=仮名=は、妻(36)と2人の息子の待つアパートに向かっていた。

 5日ぶりの再会。その間にあった出来事や考えたことなど土産話は山ほどある。「早く帰り着いて聞かせてあげたい」。そんな思いが、自然と足を速めさせた。

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 「週末婚」-。1999年2月、こんなタイトルの小説が出版された。内館牧子さん作。「普段は別々に生活し、週末だけを一緒に過ごす夫婦」を描いた物語だ。テレビドラマ化もされるなど、結婚の新しいスタイルとして話題を呼んでいる。

 この小説を地でいっているのが、卓さん夫婦だ。

 イベント企画会社の代表を務める卓さんの一週間のスケジュールは、こうだ。

 月曜日から金曜日までは、アパートから車で10分ほど離れた一軒家で、実母(72)と2人で暮らしている。

 金曜日の夜、仕事を終えて妻と子どものもとへ。2晩泊まり、レジャーを楽しむなどして家族との時間を過ごす。

 日曜日の夜、自宅に戻る。

 こんな二重生活をはじめて2年近くになる。

 きっかけは、嫁姑問題だった。

 10年前に結婚して以来、母と同居してきた。妻はフリーの内装デザイナーだったが、結婚3年目に長男を産んでから主婦業に専念していた。母は小さな文房具店を出していて家を空けることも多かったので、しばらくは波風は立たなかった。

 7年目の夏、母が体調を崩して店を引き払った。一日中、顔を突き合わせる日々。すると「ひとこと多い母」と「自立心の強い妻」との間に火花が散りはじめた。家事や育児で事あるごとに衝突した。

 そのころ、卓さんは佐賀で計画されていたイベントの準備に2年がかりで取り組んでいた。泊まりも多かった。

 「家を出たい」。募ったものが爆発した妻の言葉は、寝耳に水だった。

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 「母は父と別れて、1人で僕を育ててくれた。1人残して妻と一緒に行くことはできない」「妻には心底ほれている。別れるなんて考えられない」。板挟みに悩んだ。

 とりあえず妻をなだめることから手を着けた。だが…。「お義母さんと私とどっちが大切なの」「俺の立場も考えろ」。言い争いになりかけた。そのとき、側にいた息子の戸惑った顔が目に入った。

 「僕の両親はけんかが絶えなかった。父はちゃぶ台をひっくり返して怒るような激しい人で、母に手を上げることも多かった。その光景は今も頭に残っています。怖かった。両親が離婚を決めたときは、正直ホッとしました」

 「子どもにだけは夫婦仲の悪い姿を見せたくない」との思いは人一倍強かった。そこで出した結論が「週末婚」だった。

 この記事は1999年4月12日付で、文中の年齢、肩書、名称などの情報はすべて掲載当時のものです。

    ◇    ◇

 21世紀に入って20年が過ぎた。この間、女性の社会進出が進み、男女の関係も変化したように見える。では、夫婦のカタチは…。1999年の連載「夫婦でいる理由(わけ)」を読み返してみると、その答えが見えてくる。

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