ひとり親、悪戦苦闘の日々…「肩の力がすっと抜けた」きっかけは

西日本新聞

復刻連載・夫婦でいる理由(わけ)<11>

 「子どものため」が、唯一の「夫婦でいる理由」になっている人も少なくない。その裏側には「両親そろった家庭の方が、ひとり親の子より幸せだ」という固定観念が見え隠れする。

 1999年3月末、ひとり親家庭の自助グループの結成総会が九州の地方都市で開かれた。その中で行われたミニシンポジウムでも、パネリストから、ひとり親ならではの子育ての悩みが打ち明けられた。

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 「私はバツ2。2人いる子の父親は別々です。長男は11歳。そろそろ事情を知っていい時期ですね。でも、子どもが動揺しないように、きちんと説明できるか、不安です。二度裏切られたことで自己評価が下がってるんです。自信がない」(Kさん)

 「離婚後、長男は不登校になりました。『母子家庭だから』と思われたくない一心で、息子を無理やり登校させようとしました。それでいっそう苦しめた。世間から同情されることはあっても、ひとり親の身になって手を貸してくれる人なんかいなかった。一人で抱え込んでました」(Sさん)

 悪戦苦闘の日々。だが、2人の言葉に不思議と悲愴感は感じられなかった。明るい表情でいられるのには、共通の理由があった。

 「苦しんでいたとき、自助グループの準備会を通じて、悩みや不安をぶつけても受け止めてくれる仲間を持つことができました。ぶちまけた後は肩の力がすっと抜けて、自分を見つめる余裕が出てきた。考え方も変わりました」

 Kさんの場合、「2度の結婚生活の中でも、それぞれに幸せな時期はあった。子どもができるまで、夫婦の間に愛情があったのは確かです。2人の子は祝福されて生まれてきた。そのことをありのまま伝えよう。そうすれば、子どもも安心してくれると思います」。

 Sさんの場合、「少し距離を置いて子どもを見られるようになりました。すると突然、息子が『おれの人生は一味違うね』って笑ったんです。私たち親子は不器用な生き方しかできないけど、それもいい。気を楽にして子どもと接していくうちに、親子関係も少しだけよくなりました」。

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 約30人が参加した結成総会では「もっと輪を広げよう」「福祉の向上を目指して活動しよう」など前向きの発言が相次いだ。初めての集いは盛会に終わった。

 シンポの司会を務めた父子家庭の父親は、こう話していた。「そばにいても相談相手にすらならない夫や妻と過ごすより、同じ境遇の者同士の方が分かりあえるし、安らげる。要は、どちらが豊かな人間関係か、ということ。それが子育てにも影響してくるんじゃないでしょうか」

 この記事は1999年4月14日付で、文中の年齢、肩書、名称などの情報はすべて掲載当時のものです。

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 21世紀に入って20年が過ぎた。この間、女性の社会進出が進み、男女の関係も変化したように見える。では、夫婦のカタチは…。1999年の連載「夫婦でいる理由(わけ)」を読み返してみると、その答えが見えてくる。

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