「何されるか分からない」米大統領選は公正? 有権者疑心暗鬼

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】11月3日の米大統領選まで残り1週間。新型コロナウイルス禍の影響で、前回選挙の総投票数の4割超に当たる約5900万人が既に郵便投票を含む期日前投票を済ませており、投票率は過去最高を記録するとの予測もある。共和党候補のトランプ大統領と、民主党候補のバイデン前副大統領の対立が激しさを増す中、両候補の支持者の間には「郵便投票がきちんと集計されるのか」「投票時に妨害を受けるのではないか」との懸念が高まっている。

 「黒人の先人が命を犠牲にして勝ち取った投票権の行使は、私の責務だ」。今月中旬、退役軍人の黒人女性トリセルさん(48)は、南部バージニア州アーリントンに設置された郵便投票用ポストに一票を投じた。新型コロナの感染を心配して大混雑が予想される投開票日を避け、郵便投票を選んだ。ただ「郵便投票がきちんと集計されるか、不安がないわけではない」。

 今回の大統領選では感染防止を図るため、多くの州で郵便投票を拡大しており、利用者が殺到して開票作業が間に合わないのではとの懸念がくすぶる。それ以上に、トリセルさんが心配するのはポストから投票用紙が盗まれるなど不正の横行だ。投函(とうかん)場所を選んだ理由について、近くの建物に防犯カメラが設置されていて「監視体制がしっかりしているから」と話した。

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 こうした不安が広がっている一因は、トランプ氏が「郵便投票には詐欺が多い」と根拠なき批判を展開しているためだ。25日の東部州であった選挙集会でも「トランプと書かれた投票用紙は捨てられる」などと述べ、不正で再選が阻止されるという“陰謀論”を繰り返し訴えた。

 陣営は投開票日の不正阻止を名目に、全米各地で監視ボランティアを募集しており、一部の州ではトランプ氏支持者が、事前投票会場の近くで旗を掲げて示威活動をしているなどの報告が増えている。9月に支持者が集結する騒ぎがあったバージニア州内の投票所前には24日、銃の携帯を禁じる警告書が貼られていた。

 「選挙用の看板が破られる嫌がらせが既に起きているが、心配なのは投票日当日の妨害。何をされるか分からない」。激戦州の東部ペンシルベニアで選挙ボランティアをする民主党支持の男性は、警戒感をあらわにする。

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 とりわけ、民主党の支持基盤である黒人層の危機感は強い。トランプ氏の人種問題への対応に不満を持つ黒人の投票率が大幅に増え、同氏の再選を阻む大きな要因となる可能性もあるだけに「トランプ支持層から標的にされる」との不安が広がる。

 全米黒人地位向上協会(NAACP)南部ノースカロライナ州代表のスピアマン牧師(69)によると、黒人の有権者がトランプ氏支持者から「毎回、民主党に投票する必要はない」と言われ、同氏を支持するよう圧力をかけられるなどのケースが相次いでいるという。黒人の人口が2割を占める同州では「民主党側が不正投票をもくろんでいる」といった根拠の乏しい情報の拡散も含めて「これまでになく妨害活動が多い」(同牧師)と危ぶむ。

 スピアマン牧師の元には「トランプ氏が選挙に負けた場合、支持者が暴動を起こすのでは」と心配する声も寄せられる。一方、トランプ氏支持者にもバイデン氏が敗れれば、民主党支持者が暴発するとの疑念が渦巻く。共和、民主両党の支持者は互いに不信感を募らせ、疑心暗鬼に陥っている。

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