「のれんに腕押し、らしい演説」〝菅色〟前面 懸案素通りで政策羅列

西日本新聞 総合面 湯之前 八州

 菅義偉首相は26日の所信表明演説で、行政の押印廃止や不妊治療への保険適用といった個別の政策推進をひたすら訴えた。一方で日本学術会議の会員候補任命拒否や福島第1原発処理水の処分方針など、反発が予想される政治課題には言及しなかった。国民が変化を実感しやすいテーマを選び、実務重視の「働く内閣」をアピールしつつ、懸案に目が向かないよう狙ったようにも映る。

 「国難のさなかに国のかじ取りという大変重い責任を担うこととなった」

 午後2時すぎ、衆院本会議場。登壇した首相は、歓迎する与党議員の拍手が鳴りやまないうちに演説を始めた。最初に口にしたのは新型コロナウイルス対策。検査の充実やワクチン確保、持続化給付金…。第2次安倍政権からの事業を自賛しつつ「ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくる」と訴え、デジタル庁新設に論を進めた。

 「農産品の輸出戦略を年末までに策定する」「成果を実感いただきたい」。期限を区切り、数値目標を示し、実行力を強調した。個別政策の羅列で批判のしようもないのか、野党のやじは少なめ。「1億総活躍」などイメージ先行の看板を掲げ、歴史上の人物や市井の人のエピソードで持論を正当化した安倍晋三前首相の演説とは対照的だ。

 全文は約7千字。平成以降の所信表明演説では平均水準だが、前政権の平均約5600字より大幅に増えた。政府高官らによると、前政権と同じく官邸主導で文案を作成。首相は推敲(すいこう)を重ね、外遊先のベトナム、インドネシアからも再三指示を飛ばしたという。

 ただ、一連のコロナ対策で膨れ上がった国の借金をどうするか、財政再建に向けた具体的な言及はなし。2050年までの脱炭素社会を「宣言する」としたものの、両輪をなす原発政策は「安全最優先」としか記さなかった。目指す社会像も「自助・共助・公助」「絆」と言うだけで深入りしない。

 批判を浴びそうなテーマを素通りした首相の国会初演説。自民党の中堅議員はこう評価した。「野党からすれば、のれんに腕押し。菅さんらしい演説だ」 (湯之前八州)

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