核禁条約発効へ 「絶対悪」の認識共有せよ

西日本新聞 オピニオン面

 「核兵器なき世界」を目指す重要な一歩である。この非人道的な兵器の開発から使用、威嚇(いかく)までを違法と定めた核兵器禁止条約が来年1月、発効することになった。核兵器を全面的に認めない条約は史上初めてだ。

 核禁条約は2017年7月に国連で122カ国・地域の賛成で採択され、3年余りで発効に必要な批准数に達した。

 これまで批准した50の国・地域は人口や経済規模の小さな途上国が大半を占める。「核抑止力」に依拠する大国の論理に翻弄(ほんろう)されがちな立場ながら、核廃絶に賛成する国を着実に積み上げ、条約発効に結実させた。

 この事実の重さを、核保有国はもちろん、日本をはじめ条約に参加していない国々は真剣に受け止めなければならない。

 条約発効に導いた国際世論の背景には、核兵器を巡る現状への強い危機感がある。

 世界には現在約1万3400発の核兵器が存在し、削減は停滞したままだ。その9割を保有する米ロは新型核兵器の開発を競い、中国の台頭もあり、新たな軍拡競争が始まっている。

 米ロ間で唯一の核軍縮枠組みとなる新戦略兵器削減条約(新START)は来年2月が失効期限だが、その後は不透明だ。保有国まで参加する核拡散防止条約(NPT)も本来の機能が生かされていると言い難い。核使用の危険性は高まる一方だ。

 こうした流れは変えなければならない。日本は本来その先導役を担うべき国のはずである。しかし、米国の核戦略に組み込まれ、中国や北朝鮮の核の脅威が存在する地域情勢から、政府は一貫して核禁条約の実効性を否定している。

 確かに米国、ロシア、中国など核保有国は参加しておらず、条約に縛られない。それでも、米国は条約参加国に批准取り下げを迫る書簡を送った。発効によって核抑止論の正当性を損なうと危ぶんだのだろう。

 見方を変えれば、条約は「核は絶対悪」という共通認識を世界に広め、核保有国への圧力となり得るとも言える。対人地雷やクラスター爆弾と同様、人道上使えない兵器に「核」を変容させる可能性はあるだろう。

 日本は核保有国と非保有国の「橋渡し役」を掲げる以上、核廃絶を働き掛けると同時に、発効後の締約国会議にオブザーバーでの参加を検討し、いずれは条約批准を目指すべきだ。

 国連のグテレス事務総長は条約発効を「世界的運動の到達点」と評価した。「人類と核兵器は共存できない」と日本から訴え続けた被爆者の声が条約の原点である。唯一の戦争被爆国として政府も私たちもあらためて条約の意義をかみしめたい。

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