まるで忍者屋敷…大河ドラマとゆかりも 国内有数の武家屋敷群

西日本新聞 もっと九州面 片岡 寛

 鹿児島支局に着任して2カ月余り。鹿児島県は南北600キロに及び、各地に個性豊かな文化や歴史が根付く。県北部の出水市はツルの越冬地として全国的に有名であるとともに、国内有数の武家屋敷群(同市麓町)があることでも知られる。関ケ原の合戦や朝鮮出兵で活躍した島津義弘や、NHK大河ドラマとのゆかりもある地だ。歴史好きとしては大いに興味をそそられるところ。鹿児島市から車を走らせた。

 まず、武家屋敷群を散策する拠点として3年前にオープンした「出水麓歴史館」を訪ねた。武家屋敷群の概要や成り立ちを学ぶことができ、貴重な武具や史料の展示もある。市の元産業振興部長で、現在は観光ガイドを務める大内山裕さん(69)と合流し、取材に同行してもらった。

 江戸時代の薩摩藩は、各地に「麓」と呼ばれる武家屋敷群を整備し、領内統治の要とした。中でも肥後(熊本)と接する出水は防衛の要衝で「国境の守りを固めるため、藩内外から屈強な武士が集められたそうです」と大内山さん。出水の武士団は薩摩藩最強とされ、武士の行動規範を説いた「出水兵児(へこ)修養掟(おきて)」は、郷土の教えとして今でも広く親しまれている。

 歴史館の正面にある出水小は、藩主の宿泊所があった場所で、築400年とされる県指定文化財「御仮屋(おかりや)門」が校門として残る。島津義弘が出水で隠居するために現在の姶良市から移築したと伝わる。子どもたちは、地元の歴史を身近に感じながら日々の学校生活を送っているに違いない。

 歴史館からほど近くにある武家屋敷の税所(さいしょ)邸に向かった。建物内部まで公開されている屋敷は竹添邸、税所邸の2カ所あり、築250年の税所邸の立派な門構えや広々とした座敷に感心していると、いろり横の床板が外れていることに気付いた。「床下に抜け道があって、外に出られるようになっています」と大内山さん。まるで忍者屋敷のようだ。

 外敵への備えはこれだけではない。背の高い生け垣は外からの視界を遮り、門を閉じれば、さながら城のように守りを固めることができる。身を潜ませる屋根裏部屋のようなスペースもある。

 江戸時代は長く太平の世が続いたが、出水麓には、先人の気構えが脈々と受け継がれていたようだ。大内山さんは「武家屋敷には今も子孫の方々が誇りを持って住み続けています。これだけの数の武家屋敷が大切に保存されてきた理由の一つでしょう」と解説する。

 続いて、庭が公開されている宮路邸へ。2008年に放映された大河ドラマ「篤姫」で、高橋英樹さんが演じる島津斉彬(なりあきら)が「お国入り」する場面が撮影されたという。確かに趣のある門や石垣が往時の雰囲気をしのばせる。

 歴史館近く発着の観光牛車に乗ってのんびりと散策するのもお勧めだ。ガイド付きで約1キロのコースを25分ほどで巡る。車1台がやっと通れるほどの狭い路地もあり、江戸時代の町並みが、ほぼそのままの形で残っている。

 牛車に試乗させてもらった。牛車を引く黒毛和牛のちはる(7歳、雌)の足取りとともに座席がわずかに揺れ、なんとも乗り心地が良い。ちはるは人間なら40歳ほど。18年の大河ドラマ「西郷どん」に出演した経験がある「女優」だというから、驚いた。

 今月17日には、シベリア方面からツルの第1陣が出水平野に飛来した。例年は1万羽以上が集まり、春まで羽を休める。ツルの飛来とともに、武家屋敷群を含めた出水観光がにぎやかになりそうだ。 (片岡寛)

 ▼出水麓武家屋敷群 1599年から約30年をかけて造成された。薩摩藩内最大の武家屋敷群で、約150戸が現存する。一帯の43・8ヘクタールが国の重要伝統的建造物群保存地区で、昨年5月には、鹿児島県内各地の武家屋敷群とともに日本遺産に認定された。出水麓歴史館、竹添邸、税所邸には共通入館証(大人510円、小中学生300円)があり、着物の着付けや茶道体験、観光牛車(いずれも有料)は事前予約が必要。出水市シティセールス課=0996(63)4059。

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