思い出の味をもう一度 熊本・高森町の地トウキビ

西日本新聞 夕刊

 テレビで見た、軒先一面につるされただいだい色のトウモロコシ。どんな人が作っているのか知りたくて、宮崎県高千穂町との県境にある熊本県高森町下切地区に、生産者を訪ねた。

 「子どもんときに食べよった、焼きとうもろこしの味が忘れられんでですね。もう一度食べたいと、15年前から作りよっとです」と、笑顔で迎えてくれた甲斐好夫さん(73)。知り合いから分けてもらった50粒の種から始め、今や40アールの畑で1万株にまで増えた。

 自給用の米が足りなかった昔、奥阿蘇や高千穂地域では、どの家も「地トウキビ」と呼ぶ在来トウモロコシを育てていた。夏はとれたてを焼いて食べ、残りは9月半ばに収穫後、阿蘇の寒風に当てて12月まで乾燥。石臼で粗くひいた「割とうもろこし」を白米と混ぜて炊き、トウキビ飯にして食べていた。

 甲斐さんにトウキビ飯のおにぎりをいただいた。ほんのり甘く、黄色い粒が見た目にも食欲をそそる。子どもも喜びそうだ。

 「焼きとうもろこしを食べられるのは、夏場の短い期間だけ。固かばってん、炭火で焼けば小味(こあじ)のあって香ばしかよ」と、妻のテツコさん。食の原風景とも言える地トウキビ。この地域に来たらぜひ一度試してほしい、ふるさとの味だ。

 (フリー記者・寺嶋悠)

 ▼割とうもろこし 宮崎県高千穂町三田井の「がまだせ市場」内にある直売所「鬼八の蔵」をはじめ、同町周辺の直売所などで販売。220グラム入り1袋486円(税込み)ほか。鬼八の蔵=0982(73)1831。

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