水害軽減、一定効果あるが…「川辺川ダムがあったら」検証 熊本豪雨

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 今年7月4日に熊本県の球磨川流域で起きた集中豪雨災害を踏まえ、今後の治水対策をどう進めるのか。国土交通省九州地方整備局や県、自治体、関係機関による議論が動きだした。論点の一つが12年前に中止された川辺川ダム建設計画の復活も含めた取り扱いだ。九地整は今月初め、ダムが計画通り完成していればどれほどの効果があったと考えられるのか、検証結果を公表した。要点を整理し、どう読み解くべきか考えた。

 国の計画によると、川辺川ダムの建設予定地は、球磨川の最大支流、川辺川の上流部。当初の目的は洪水調節のほか農業用水や発電用水の確保なども含まれ、洪水調節用の容量は8400万トンとされていた。

 九地整は今回の検証で、ダムが貯水した量を5700万トンと試算し、緊急放流の必要はなかったと判断。流域の5地点について流量と水位を推定し、豪雨当時のデータと比較した=イラスト①。

 ピーク流量は、球磨川流域にある一武地点は、川辺川ダムの下流ではなく、川辺川との合流点の手前にあるためダムの効果はなく、他の4地点では毎秒2千トンから2600トンの流量を低減させる効果があったと報告した。

 水位は5地点とも低下して、水位差は川辺川流域の柳瀬地点で約2・1メートル、市街地のある人吉地点で約2・4~1・7メートル、下流部の横石地点で約60センチと推定された。

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 こうしたデータを基にした人吉市付近での氾濫試算結果は、浸水範囲は約6割減少。浸水深も、床下浸水程度のレベル(50センチ未満)は4%減、床上に達し家屋の1階部分が浸水するレベル(50センチ~3メートル)は52%減、家屋の2階以上も浸水するレベル(3メートル以上)は89%減となった。

 被害軽減に一定の効果が望めたことがデータで示された格好だ。一方で、今回はダム予定地より下流部でも大雨が降っており、流域全体で氾濫を防ぐまでには至らなかったと言える。

 また、ダムがあった場合のピーク流量や水位の試算値は、大雨の際も安全に川の水を流すための河川整備目標である、計画高水流量や計画高水位を上回っている地点が目立った。氾濫や堤防決壊が起きる恐れがあることを意味し、ハード面で対処するならダム以外の施設も必要となる。

 球磨川流域自治体の水害タイムライン(防災行動計画)に携わる東京大大学院の松尾一郎客員教授は「検証結果はおおむね妥当だが、ダムを造っても氾濫は起こり得るという内容で、住民には厳しい現実だろう。一日も早い被災者の生活再建と復興まちづくり案の提示、復興途中の防災対策強化が急務だ」と指摘。

 早期避難につなげるソフト面を含めた総合対策をまとめるためにも「今回の降雨の評価や実況に基づく降雨予想とその伝達、球磨川に注ぐ数々の支流の氾濫状況についても徹底検証しておく必要がある」と話している。 (特別編集委員・長谷川彰)

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