福岡・糸島の秋にクラフト体験 木工、革小物…多彩な作家が創作活動

西日本新聞 もっと九州面 竹森 太一

 豊かな海や山の自然に恵まれている福岡県糸島市では、工芸品など多彩なジャンルの作家がそれぞれのペースで作品と向き合っている。木工、陶芸、絵画、革小物、アクセサリー、服飾…。拠点を構えた作家が刺激し合い、そのつながり、暮らしぶりが新たな人を引き寄せる。どこかゆったりとした時間の流れも、創作の地としてうってつけなのだろう。工房での「クラフト体験」では、そんな空気感に接することができた。

 糸島でキャリアの長短はあれど、120人を超える作家が活動していると言われる。移住者も多い。大消費地の福岡市のお隣という利点もあるようだ。

 今回、体験取材を兼ねて足を運んだのは、市西部の福吉漁港そばに店舗兼工房を構える革細工の店「BLESS」。佐賀市出身の井手英史さん(35)が妻の絢子さん(34)と2人で2016年2月にオープンした。

 高校卒業後、自動車関係などの製造業で働いた英史さん。量産の現場で「自分自身のモノ作りがしたい。でも、やりたいことが見つからない…」ともどかしさを感じていたという。

 契機は2011年の東日本大震災。被災地でのボランティア活動で「無力さを痛感」し、佐賀に戻っても夜眠れなくなった。そんな時期にぶらりと出向いたのが、脊振山系を越えた場所にある糸島だった。

 自然に囲まれ、おいしいものがたくさんあった。週2回ペースで通った。多くの工房を訪ね、幅広いジャンルの作家たちとつながった。「自分にできることは何だろう。ここに住んで、モノ作りができたら」-。働きながら勉強などができるニュージーランドでの1年間の「ワーキングホリデー」を経て、身近だった革製品の作り手として歩み始めて5年目を迎えている。

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 英史さんはニュージーランドの同じホテルで働いていた、大阪府出身の絢子さんと結婚し、夫婦で革小物作りの試行錯誤を重ねた。カードケースやキーホルダーなど数点だった商品は、数え切れないほどになった。現在の店舗は、古い民家のガレージだった場所を改装して使っている。

 環境に優しい「植物タンニンなめし」の革を使い、麻糸でほとんどの商品を手縫いで製作。修理しながら末永く使えることにこだわっている。害獣として駆除されたイノシシの皮を使った商品作りにも挑戦している。

 「作業効率など改善すべき点はありますが、糸島を楽しみながら、無理のないペースでモノ作りを続けたい。自分らが楽しくないと、それがお客さんにも伝わってしまうと思うので」と井手さん夫婦。今も、陶芸家など自由に活動する糸島の作家の作品に接し、話を聞けることが、面白くて仕方ないという。

 井手さん夫婦が随時受け付けている「レザークラフト体験」の一つ、十数センチ四方のトレー作り(税込み2200円)に挑戦した。カットされた6色の革から好みの色を選ぶ。穴を開けて四隅を金具で留め、好きな文字の刻印を押す。英史さんのマンツーマン指導を受け、20分ほどで完成した。店舗には麻糸で四隅を留めた同様の商品が並んでいるが、自作だとさらに愛着が増しそうだ。少しの時間でも「糸島のアーティスト」気分に浸れた。

 オーダーや既製品の修理・リメークにも対応するBLESS。思い出が詰まったランドセルのリメークも受け付け、商品と同じデザインであれば、同料金で製作が可能という。取材から数日後、今春大学に進学した次女が使っていたランドセルを持参した。自宅の棚で眠っていた。年明けにもカードケースやキーホルダーに生まれ変わるのが楽しみだ。BLESS(火・水曜定休)=092(338)8043。

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 糸島市の秋の恒例イベント「糸島クラフトフェス」はコロナ禍で中止になったが、実行委員会は10月24日~11月23日を「糸島クラフトマンス」と銘打ち、工房巡りを提案している。工房の場所や体験企画を案内するパンフレットを市観光協会=092(322)2098=や、多くの作家の作品を展示・販売している「いとしま応援プラザ」=092(334)2066=などで配布している。 (竹森太一)

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