節目に湧く愛と誇り 曳山囃子を披露した18歳

西日本新聞 佐賀版 津留 恒星

曳山 駆けぬ秋~唐津くんち2020~(中)

 10月9日夜、ちょうちんが照らす佐賀県唐津市の唐津神社。唐津くんちの安全を願う「初くんち奉告祭」で、唐津東高3年の久野(きゅうの)汰郎さん(18)は曳山(ひきやま)巡行時に奏でる曳山囃子(やまばやし)を披露した。「曳山巡行がなくなった分、気合を入れて笛を吹いた」。奉納を終え、やりきった表情を見せた。

 小学校低学年で初めて本町の8番曳山「金獅子」をひいた。その後、台車の上で曳山囃子を奏でる囃子方に憧れ笛を練習。中学1年から6年間情熱を注いだ。

 「囃子の速さで曳山のスピードが変わる。責任もあるけど充実感のほうが大きい」。例年11月3日の「お旅所神幸」で、曳山を豪快に砂地に引っ張り込むときの高揚感がたまらない。

 慣習で囃子方を担えるのは高校生まで。卒業後は県外の大学に進学し、少年時代から打ち込んできたテニスを続ける予定だ。そうなれば、在学中はくんちに戻れない可能性が高い。

 今年の巡行中止は「高校総体がなくなったときと同じような感覚」だった。今は気持ちの整理もつき、受験対策に励む。でも、くんちが近づくと落ち着かない。今月、曳(ひ)き子の友人宅で仲間たちと笛を吹いた。くんちへの強い愛着を自らに感じ、「またいつか参加したい」と願っている。

   ◆    ◆

 曳山をひく女の子たちの思いもさまざまだ。町によって小学生まで、中学生までと女性の曳き子が認められるが、翌年から参加できなくなる最終学年の今年、曳山をひけなくなった。

 そんな中、12番曳山「珠取(たまとり)獅子」をひく京町は、現小学6年の来年の参加をいち早く認めた。町の曳き子を束ねる山田信二正取締(50)は「大切な節目をちゃんと迎えさせてあげたい」と明かす。

 町は毎年、くんちの最終日に小学6年女子の“卒業式”を開く。一人一人に名前入りの采配を渡し、拍手でねぎらう。涙をこぼす子もいれば、「来年は家の手伝いを頑張る」と抱負を語る子もいる。

 卒業後は、母親と一緒に料理を作るなどして知人らをもてなす側に回る。「おくんちは先祖から僕ら、僕らから次の世代へとつないでいくもの」。山田さんはそう語る。

 京町の曳き子で、大志小6年の大塚日和さん(11)は大のくんち好き。昨年は迫る卒業が寂しくなり、曳山の綱を何度も握りしめた。もちろん、来年も法被姿で曳山をひくつもりだ。「唐津だけの祭りで、唐津の子どもだから曳山をひけていることがすっごくうれしい」。そんな純粋な思いが歴史を紡ぐ。

 (津留恒星)

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