先週末、朝のテレビから「長崎の鐘」が流れてきた…

西日本新聞 オピニオン面

 先週末、朝のテレビから「長崎の鐘」が流れてきた。古関裕而をモデルにしたNHKの連続ドラマだ。作曲を依頼された主人公は、着想を求めて原爆の傷痕が残る長崎を訪ねる

▼実際の「長崎の鐘」は、被爆者の救護活動を続けた永井隆医師が、やけどに苦しみ死んでいく人々や破壊された街の様子を記録した随筆を基に作られた。ドラマでは、永井がモデルの医師が主人公にこんな言葉を託す

▼「どん底に大地あり」。絶望の底に突き落とされても、大地を踏みしめて立ち上がれば、希望が見えてくる。廃虚の中から掘り起こされた鐘が、再び鳴り響くように-。戦争犠牲者の鎮魂と復興への希望を込めた名曲はこうして生まれた

▼放送の翌々日、朝のテレビから被爆地に希望をもたらす鐘の音のようなニュースが。核兵器の開発、保有、使用を禁じる核兵器禁止条約が来年1月、発効することになった、と。条約に批准した国・地域が発効に必要な50に達したのだ

▼被爆から75年。どん底から立ち上がり、核兵器は「絶対悪」と訴え続けた長崎や広島の被爆者の悲願がようやく実を結んだ。だが、ここが始まりでもある

▼米ロなどの核保有国ばかりでなく、米国の「核の傘」に頼っている日本政府も、核禁条約に背を向ける。「唯一の戦争被爆国の使命は」と問えば、答えは明らか。平和の大地を踏みしめ、次世代の希望となる核なき世界の鐘を鳴らすことだ。

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