日韓、首脳会談巡り“神経戦” 徴用工判決から2年…主張なお開き

西日本新聞 国際面 池田 郷

 【ソウル池田郷】韓国最高裁が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた判決から30日で2年となった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は菅義偉首相との初の首脳会談を年内に実現させ、事態打開につなげたい意向。日本は会談に応じる前提として、韓国に日本企業の資産現金化を回避する方策を示すよう求めている。互いの思惑がすれ違う中、韓国が議長国として年内開催を目指す日中韓首脳会談や、大型選挙などの政治日程もにらんだ神経戦となっている。

 菅氏は首相就任後の9月下旬、文氏と電話で会談。外交筋によると、文氏が日中韓首脳会談への参加と個別の首脳会談開催を呼びかけたのに対し、菅氏は回答を保留した上で、徴用工問題に触れて韓国側の努力を促したという。

 外務省幹部は「首相の初訪韓前後に資産現金化の動きが加速すれば、顔に泥を塗られることになる」と慎重だ。菅氏や外務省は、日中の首脳を招くことで新型コロナウイルス対策に成功していると内外に誇示したい文氏の立場を踏まえ、韓国側をじらせて譲歩を引き出す狙いだ。

 菅氏就任後、韓国側に日韓関係改善を模索する動きが目立つ。与党「共に民主党」代表の李洛淵(イ・ナギョン)前首相ら与党関係者は18日に訪韓した日韓議員連盟幹事長の河村建夫元官房長官と相次いで会談。南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使も21日、徴用工問題に関連して「(菅氏)自ら現実主義的なアプローチをしている」と持ち上げた。

 新たなチャンネルとして文氏に近い盧英敏(ノ・ヨンミン)秘書室長と秋葉剛男外務次官の協議も始まったという。韓国は資産現金化後の日本の報復的措置を警戒しており、韓国外交筋は「文政権の立場を司法当局が忖度(そんたく)し、現金化手続きを先延ばしにする可能性がある」との見方を示す。

 ただ双方の主張はなお開きが大きい。日本は1965年の日韓請求権協定で問題は解決済みとの立場。韓国は三権分立を理由に行政府は司法判断に介入できないとの主張を繰り返す。

 両国の政治日程もネックだ。韓国は2022年3月の次期大統領選の前哨戦となるソウルと釜山の市長選が21年4月に迫り、日本も1年以内に総選挙がある。選挙が近づくにつれ、両政権とも世論の反発を恐れて政治的妥協が困難になる。

 日韓外交に詳しい世宗研究所の陳昌洙(チン・チャンス)日本研究センター長は「年内が問題解決の最適期だ」と指摘。韓国外務省OBは「来年後半以降、次期大統領選の前哨戦が本格化し、文氏は政治的に重要な決断が難しくなる」と語る。

 両政府は29日、対面による外務省局長級協議を約8カ月ぶりに再開させたが、議論は平行線をたどった。日本外交筋は「韓国は前向きだが、日本の立場を受け入れて原告や国内世論を説得する覚悟を固めたとはいえない」と明かす。

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