祭りの気分少しでも “幻”の酒や料理でおもてなし

西日本新聞 佐賀版 野村 創

曳山 駆けぬ秋~唐津くんち2020~(下)

 曳山(やま)をひく男たちが「エンヤ、エンヤ」の威勢の良い掛け声を響かせる。佐賀県唐津市のスーパー「まいづる本店」の特設コーナー。大型モニターに唐津くんちの曳山(ひきやま)巡行が映し出され、その下には市内の鳴滝酒造が開発した清酒「2020年唐津くんちを想う」が所狭しと並んでいた。

 「今年は曳山巡行がなくなったので、特別なお酒を造りました」。同酒造の北原初彦営業部長(63)が声を掛けると、買い物客が次々と足を止める。40代女性は「おくんちがなくて寂しい私たちの気持ちに寄り添うお酒を造ってくれてうれしい」と、720ミリリットル入りの瓶を2本買い求めた。

 酒は「幻となった今年の曳山巡行に思いをはせよう」と、曳き子でもある古舘正典社長(54)が考案した。同社にとってくんちは正月と並ぶかき入れ時だが、今年は大幅な販売減が予想される。来年の盛大な開催を期待するとともに、会社の生き残りもかけて開発した商品だ。「今年は曳山は走らないが3日の神事はある。お酒を飲みながらできる範囲でお祝いしてもらえれば」。古舘社長は願う。

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 例年なら11月2日からの3日間、約50万人の人出でにぎわう唐津くんち。今年は観光客の減少は避けられず、地域経済にも深刻な影響を与えそうだ。一方で、街を活気づかせる取り組みも動きだしている。

 市中心部の呉服町商店街は1日と3日、市内に立ち寄るJR九州の観光列車「或る列車」の客をもてなす。唐津くんちでは、曳き子の家で豪華な料理のおもてなしをする習わしがある。商店街の有志は今年、その代わりに乗客にちまきや酒を振る舞い、曳山囃子(やまばやし)で歓迎しようというのだ。

 坂本直樹理事長(56)は「唐津くんちが本来持つおもてなしの精神を商店街として伝えたい。意気消沈する街の人の気持ちも高められれば」と意気込む。

 曳山が巡行する市中心部の道沿いにある「カフェルーナ」では、宵曳山(よいやま)がなくなった2日夜、鯛の煮付けや煮物などのくんち料理を提供する。オーナーの前田真子さん(48)に「2日の唐津はどんな感じですか」と問い合わせがあり、「唐津にとって特別な日なのに、普通の夜になるのは寂しい」と一念発起した。当日は5500円(税込み)の会費制で、曳山囃子のライブ演奏も予定している。

 「おくんちの雰囲気だけでも味わってほしい」。前田さんはそんな思いを料理に込める。

(野村創)

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