看板猫なでる権利、商店主と1時間語り合う…「ゲーム感覚」の地域通貨

西日本新聞 一面 丹村 智子

 特定地域だけで流通する「地域通貨」を活用したユニークな取り組みが、福岡県八女市で始まった。市を訪れ、加盟施設のイベントに参加したり作業を手伝ったりすることでスマートフォン上のアプリに地域通貨がたまり、“お金では買えない”独自の交流サービスを受けられる仕組み。電子通貨なので紙幣作りは不要で、新型コロナウイルスの感染リスクを低減、地域外の人も簡単に入手できる。市はゲーム感覚で利用してもらい、地域活性化や移住促進につなげたい考えだ。

 通貨の単位は市の移住事業名「八女のロマン」に由来する「ロマン」。換金性はなく、商品などとは引き換えられないため、仮想通貨の取引や商品券などを規制する資金決済法の対象にならない。

 利用者は、自分のスマホに専用アプリをダウンロードすると、500ロマンを受け取れる。加盟施設はスマホの地図上に表示され、ロマンは施設の訪問(50ロマン)や壁塗りの手伝い(800ロマン)、注文した食事の完食(50ロマン)などで獲得。施設についてのコメントを会員制交流サイト(SNS)に投稿(50~500ロマン)、レジ袋持参(300ロマン)でもたまる。

 ためたロマンは、西鉄バス福島停留所の待合所で、地元の八女農業高が減農薬栽培した八女茶(50ロマン)を飲むのに使えるほか、商店主と1時間語り合う(500ロマン)ことも。店の看板猫をなでる権利(300ロマン)などとも交換できる。今後は農業体験や、規格外で廃棄する農作物との交換も検討している。

 通貨は使わなければ獲得から半年で消滅するところが、交流を促進させるミソだ。市の担当者は「コロナ禍で外出を控えている人が、八女を訪れるきっかけになれば」と期待する。

 仕組みは神奈川県のIT企業「面白法人カヤック」が開発。八女市は伝統産業や農業などに関心がある地域内外の人々をつなぐツールとして採用した。本年度事業費は約2千万円で国の補助も受ける。10月11日に運用を始め、22日時点で市内の加盟施設は35、登録者は728人。市は年内に千人の利用を目指し、通貨を獲得・利用できる加盟施設には5万ロマンずつ割り当てて発行した。

 地域通貨や電子決済に詳しい大和総研の長内智主任研究員は「消費ではなく交流に目的を置く点が興味深い。取り組みが移住促進につながれば、間接的に経済活性化にもなる」と話した。 (丹村智子)

【ワードBOX】地域通貨

 限られた地域やグループ間で流通する通貨。1990年代後半から内需拡大や経済の囲い込み、ボランティア活動や相互扶助の促進などを目的に紙幣や通帳形式で発行されたが、費用対効果や利便性が悪く定着しなかった。近年はスマートフォンによる電子決済などデジタル技術の進化により、導入コストが低下。昨夏には筑邦銀行(福岡県久留米市)が九州の金融機関で初めて、電子地域通貨の発行サービスの提供を始めた。

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