紛争地、難民キャンプも…海外経験を授業に 福岡雙葉高・長村さん

西日本新聞 くらし面 四宮 淳平

福岡雙葉高の教員 長村裕さん(39)に聞く

 どうすれば生徒の心に響く言葉を届けられるのか。導き出した答えが、自分自身が魅力的な人間になることだった。これまでに計5年ほど海外で暮らし、今は福岡雙葉高(福岡市)で教員として生徒に語り掛ける。「自分に興味を持って。やる気スイッチは、人に押してもらうものではない」

 大阪府出身。和歌山大を卒業後、アルバイト先の学習塾に就職した。4年が過ぎた頃、ふと思った。「生徒が話を聞いてくれるのは、自分が先生だからじゃないのか」。一人の人間として、もっと魅力を磨く必要性を感じた。

 目を向けたのは、元々興味があった海外での人道支援。希望する国際組織で働くには2年間の海外勤務と高い英語力、修士課程の修了が必要だった。

 青年海外協力隊に応募し、2010年から中央アジア・キルギスでアートイベントを企画する仕事に携わる。2年後、英国立のイースト・アングリア大学院に留学。当初は英話での授業についていけず、議論にも参加することができなかった。ひたすら勉強し、1年で修士課程を修了した。

 日本に戻り、世界各地の紛争地や災害現場で緊急支援を行う認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県)に入る。13年に南スーダンに派遣され、井戸を掘り、学校を建てた。ある朝、部族間で武力衝突が起きる。ホテルに隠れていると、一帯は兵士だらけに。「殺される」。10キロ離れた国連の拠点に車で逃げた。帰国を余儀なくされ、国境なき医師団に入り14年に再び現地へ。難民キャンプで医療スタッフ約250人の差配を担当した。

 「海外経験に一区切りつき、ようやく日本の教育に貢献できると思えた」。教員免許の有無にかかわらず、学校に教員を派遣する認定NPO法人ティーチ・フォー・ジャパン(東京)で研修を受け、15年に福岡県飯塚市の公立中に英語教員として赴任した。

 「英語は自分で勉強するもの」と考え、授業の大半は生徒が自主的に学習する時間にし、自らの海外経験も紹介。学級の平均点は目に見えて上昇したという。2年間の派遣を終えると、17年に福岡雙葉中に招かれ、現在は高校で教える。

 一度は就職してから英会話のスキルを磨いた経験があるからこそ、生徒への言葉に重みがある。「この中で将来、英語を使わない人はいる。それなら単位を落とさない程度に勉強すれば良い。でも、今の段階で決まっているか考えて」

 (編集委員・四宮淳平)

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