「やっと見つけた場所」イスラム土葬墓地に“待った” 住民から反対

西日本新聞 社会面 井中 恵仁

 大分県別府市の宗教法人「別府ムスリム教会」が、同県日出町に取得した土地をイスラム教徒(ムスリム)の土葬専用墓地にする計画について、環境悪化を理由に住民から反対の声が上がっている。専用墓地は全国でもわずか。九州には一つもなく、唯一受け入れてきた墓地もほぼ空きがなくなった。教会は「長年探し、やっと見つけた場所。切羽詰まっている。理解してほしい」と訴えている。

 イスラム教の教義では火葬は認められていない。墓地埋葬法は土葬を禁止しておらず、ムスリムの団体が霊園や墓地の一画を土葬用に購入・管理する地域もある。九州で唯一、土葬を受け入れてきたカトリック別府教会(同市)もこの10年で約20区画がほぼ埋まった。

 福岡市の男性(56)は10年前にムスリムの息子を亡くし、受け入れる墓地がある山梨県まで車で約15時間かけて運んだ。ただ金銭的負担が重く墓参りもできない。「近くにお墓がほしいのは九州のムスリムみんなの願い」と語る。

 別府ムスリム教会は埋葬場所がなくなる将来を見越して、10年以上前から近場に土地を探し始めた。県内各地に足を運んだが適地は見つからず、3年前にようやく、別府市に隣接する同町南畑の山中に約8千平方メートルの土地を見つけ、購入。計画では約100区画の専用墓地を造る。昨年3月、墓地開設許可権者の町に必要書類を提出。町条例に従い、予定地の近隣住民を対象に説明会を5回開いた。

 しかし今年8月、南畑2地区の約100人が反対の陳情書を町長と町議会に提出。予定地の約1・2キロ下にあるため池への排水流入などを懸念したためだ。池の水を牛の飲料用に利用する畜産業の男性(61)は「生活にどんな影響があるか分からない。風評被害で牛の価格が下がるのも心配」と話す。

 予定地について町は「現時点では、一般的な墓の立地条件は満たしている」と説明し、必要書類の事前審査中。最終判断する本田博文町長は「条例などに沿って判断していかなければならない」として長期化する見通しを示す。

 在日ムスリムに詳しい早稲田大の店田廣文名誉教授によると、日本で暮らすムスリムは約23万人、九州・沖縄では約1万5千人と推定される(昨年末現在)。同教会代表で、立命館アジア太平洋大(別府市)のカーン・ムハマド・タヒル・アバス教授(53)はムスリムの留学生が卒業後日本に永住するケースも増えていると指摘。「違った文化の人たちが安心して利用できるお墓の整備は急務」と訴える。

 立教大の小村明子兼任講師(宗教人類学)は「住民は未知の宗教にどう対処していいかわからず戸惑いを感じやすい。お墓という特殊な土地利用だからこそ、日本人のイスラム教徒を交えるなどして、お互いに納得するまで話し合うことが必要だ」と語った。

(井中恵仁)

大分県の天気予報

PR

大分 アクセスランキング

PR

注目のテーマ