風情あふれ、コロナ禍でもにぎわう北九州の台所 近く再整備の旦過市場

西日本新聞 もっと九州面 姫野 一陽

 「北九州の台所」と呼ばれる旦過市場(北九州市小倉北区)。この夏、北九州勤務となり、初めて訪ねた市場の活気に目を奪われた。新型コロナウイルス禍の中、多くの買い物客であふれている商店街に驚くばかりだった。そんな市場も老朽化や災害対策のため再整備の計画が進む。地元の人たちに長年愛されてきた、建て替え前の市場を歩いた。

 同市中心部の繁華街にある市場に一歩足を踏み入れると、一気に昭和の雰囲気に包まれる。ひしめき合うように建つ店、店頭に所狭しと並ぶ新鮮な青果や海の幸。通りの幅は狭いところで3歩分ほどで、客と店員の気さくなやりとりが耳に入ってくる。

 「さぁ、いらっしゃい!」。創業100年を超えるという「木下茶舗」店主の木下人英さん(74)が威勢のいい声を響かせた。気分が乗ってくると、「函館の女(ひと)」など昭和歌謡を歌うこともあるという。

 近年はペットボトルのお茶を飲む人も増え、茶葉の売り上げは減少。店では野菜や漬物も売っている。「旦過で生き抜くには毎日必要なものを売らないとね」と木下さん。オクラを購入した中年の女性客は「お店の方と話すと温かい気持ちになる」とほほ笑んだ。

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 旦過市場は大正時代の初め、市中心部を流れる紫川の支流神嶽(かんたけ)川沿いで船から荷を揚げて商売をしたことが、始まりとされる。周辺は住宅が多く、市場としてにぎわうようになったという。

 現在ある店舗の多くは昭和30年代に建てられたもので、鮮魚店、精肉店、青果店をはじめ、ぬかを入れて青魚を煮た小倉名物「ぬか炊き」の専門店、鯨肉専門店など、市場周辺を含め約120もの店舗が軒を連ねている。ただ、雨漏りするなど店舗の老朽化が深刻に。神嶽川の災害対策も兼ね、市場全体を再整備することになった。

 計画では、神嶽川への店舗のせり出しをなくし、3階建ての複合商業施設を建設。本年度中に国の事業認可を得て、2027年度の完成を目指している。新施設の1階を現在の商店主らが使用し、2階は商業フロアとして食をテーマにしたテナントを集約、3階と屋上を駐車場にする予定だ。平成生まれの私だが、今の昭和の風情は残してほしいと思ってしまう。

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 ぬか炊き専門店「百年床・宇佐美商店」をのぞいた。テレビなどでも紹介されている人気店だ。サバやイワシといった定番の具材だけでなく、スペアリブのぬか炊きは子どもも食べやすいと好評だという。

 「全国の人にぬか炊きの良さを知ってほしい」という宇佐美雄介代表(38)は昨秋、常温で2年間保存できるぬか炊きの缶詰を開発。9月からは、市場の若手店主7人で通販サイトを立ち上げ、ぬか炊き、肉、魚など11品を直送するサービスの試験運用を始めた。

 旦過市場商店街会長で鶏肉販売店「かしわ屋くろせ」を営む黒瀬善裕さんは、旦過市場の強みは「商品力」だと強調する。同じ商品でも市場内には多くの種類があり、店舗ごとに「売り」が違う。全国的にも知られた市内の高級すし店に納品している隠れた名店もあるという。黒瀬さんは「市場を見て回ったり、食べ歩いたりして探してみては」と勧めてくれた。

 再整備が迫る市場。黒瀬さんは「世の中の変化に遅れると市場はなくなる」と指摘する。時代とともに変化してきた旦過市場は、再整備でどう変わるのか。計画の進み具合を見つめていきたい。 (姫野一陽)

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