出勤時に涙、動悸も…「あんた何しに来た」耐える労働者 業績不振でパワハラ

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 新型コロナウイルスの感染拡大で、働く人が厳しい環境に置かれている。コロナ関連の解雇や雇い止めは6万人を超えるとされるが、数字には表れない影響もある。コロナ禍により業績不振に追い込まれた会社でパワハラに悩む人。勤め先から不当な扱いを受けても、再就職の難しさを予想して踏みとどまる人。苦痛を抱えた2人に話を聞いた。

 福岡県内の会社に勤める女性(48)は、コロナ禍で上司からの風当たりが強くなった。退職を決意するほど追い込まれた。

 仕事は社員の勤務管理や給与計算。上司に以前から、職場の男性社員と「付き合っているだろう」と言われてきた。否定しても疑われたという。

 コロナの感染が広がると、複数いる事務職員のうち、自分だけ名前でなく「事務員」と呼ばれるようになった。勤務表に「副」と書かれ、「正」と記載された別の社員と区別された。

 上司の指示は直接でなく、同僚を通して伝わるようになった。ほぼ無視された格好。休日に急きょ、職場のトラブルで駆け付けると、上司に「あんた、何しに来た」と言い放たれた。

 そのうち体に異変が出たという。動悸(どうき)が激しく、出勤時に涙があふれるようになった。病院では「職場の状況からくる、精神的なもの」と言われた。

 仕事は続けたかったが、限界を感じて退職願を提出。支援に入った労働組合が取り下げを会社に伝えたが、幹部は「コロナで経営が厳しいから、辞めてもらった方がいい」。圧力で退社に追い込もうとする姿勢に、憤りを感じた。

 労組の交渉で、今は勤務を続けられている。「会社は、社員が『話をしたい』と言っても逃げて回るようなところ。組合がなければ多分、辞めていました」

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 コロナ禍で新たな職探しが難しいと感じ、不当な処遇に耐える人もいる。佐賀県の50代女性は最近、退職勧奨を受けた。やっと就いた正社員の職。理由が分からず、戸惑っている。

 職場の様子が変わったのは今春。一緒に事務を担う同僚が、他の社員とは話すのに、自分とは目を合わさなくなった。質問してもほぼ無視されたという。

 対話できず仕事に遅れが生じた。上司に訴えたが「いろんな人がいるから」と対応してもらえなかった。

 排除されていると感じたことも。出勤すると職場のレイアウトが変わっている。新しい事務用品が急に届く。総務部門にいるのに自分だけ知らされなかった。

 上司に相談すると、「何を突っ掛かっているのか」「異常だ」。逆に責められ、不眠や食欲不振に悩まされるようになった。

 これを境に出勤を減らすよう求められ、拒むと退職勧奨を受けた。「理由もないのに、どうして辞めないといけないの」

 20代半ばから長く派遣で働き、雇用契約を突然切られたこともある。正規雇用の難しさも、恩恵も身に染みて分かる。「コロナで再就職は厳しいだろうし、年齢のこともある。あんなことがあったけど、できれば元通り働きたい」。会社と話し合いを続けている。

 (編集委員・河野賢治)

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