揺らぐ「安心な豆腐、納豆」の足元 “非遺伝子組み換え”作物の取り合い激化

西日本新聞 くらし面

大豆輸入の現場から (下)バイヤー高田祐憲さん寄稿

 世界的に生産が活発化する遺伝子組み換え(GM)作物。非GM大豆を日本に輸入している穀物輸入卸のバイヤー高田祐憲さん(43)は「今後も安価でおいしい豆腐や納豆を食べ続けられるか、保証の限りではない」と予測する。

 世界で生産される大豆は年間約3億6千万トン。一方、中国の消費量は1億トン強に上ります。日本が2018年に輸入した量324万トンは、中国なら約2週間で消費する計算です。

 世界的な穀物需要の高まりで、種子の開発競争が激化し、巨大世界資本による企業買収も頻繁です。現在北米で穀物種子を販売する企業は、大手3社にほぼ集約されています。

 具体的には、モンサント社を吸収したバイエル社▽ダウアグロサイエンスとデュポンが対等合併したコルテバ・アグリサイエンス社▽中国の国有総合化学メーカー「ケムチャイナ」(中国化工集団)が買収したシンジェンタ社-です。

 私が扱う非GM大豆の種子開発会社も、モンサント社とIT大手グーグル社の合弁会社に移行しました。きょう、あなたが口にした豆腐は、グーグル社を潤しているかもしれませんね。

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 日本の顧客は、用途に合わせた大豆の品質を求めます。だから豆腐用には、一般的な大豆よりタンパク含有量が7~8%高い非GM大豆の品種を選び、農家と契約します。そうでないと歩留まりが悪く、品質も一定せず、工場の生産性が下がるからです。

 一方、世界の大豆の使途は、その95%がGMかどうかがほぼ問われない搾油用や飼料用。農家としては質より量で、収穫が増えた分だけ収入も増えます。

 米国に、オールトンファームという、複数の州に数えきれないほどの農場を持つ超大規模な農業集団があります。出資者はマイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏。手がかかる非GM作物は植えません。

 私がかつて契約した農家も、この集団に組み込まれたので、もう非GM大豆を作ることはありません。

 主産地の米国北部以外はどうだろうかと、南部ケンタッキー州を訪ねました。洋酒のバーボン製造には非GMトウモロコシを使うので、非GM大豆の栽培も可能ではと考えたのです。しかし、分別管理に対する意識や選別機械の設備投資、日本向けの物流確立などの課題で断念しました。

 南米では日系人の農家に非GM大豆の栽培を依頼しましたが、その農家は2年後、搾油用のGM大豆を栽培することにしました。

 非GM栽培で収量が減る分などに割増金を支払っても、「分別管理に手間と設備コストが掛かる」などの理由で、非GMは植えたくない農家が大半です。

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 日本国内の非GM大豆の需要は今後、食生活の変化や人口減少などで漸減すると、私はみています。しかし、日本製の豆腐製造機を利用する国々からは、効率よく豆腐が製造できるとして人気はあるんです。

 米国でも、油以外の食品用原料は非GM大豆です。世界的にも、豆腐や豆乳だけでなく代替肉やエナジーバー向けなど需要は増加中です。ただ、非GMは生産量が少なく、現場では取り合いの状況です。

 私が長年契約していたミネソタ州の農家の非GM大豆は、台湾の大手食品メーカーが全量購入することになりました。非GMなら品種・品質は問わず、価格の条件も良かったようです。今後、消費量が桁違いに多い中国が積極的に輸入するようになれば、もう、われわれは太刀打ちできないでしょう。

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 穀物メジャーは事業集約で非GM大豆は取り扱わないし、取り扱ってきた北米の中小企業は、競争激化で淘汰(とうた)されつつあります。

 豆腐や納豆は日本型食生活の象徴です。それを支えるのは主産地の米国とカナダ。年々、契約農家の確保が難しくなり、大豆相場は上がるばかり。撤退した国内の大手商社もあります。それでも、確かな品質の非GM大豆を安定供給するには、この最激戦地の北米で確保する以外に手はないというのが私の結論です。

 大豆に限らず、日本の食料自給率は38%。果たして今後も今の食生活を続けられるのか。状況は厳しいと言わざるを得ません。

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