「エロは絶対につぶれない」18禁自販機、盛衰と共に…51歳見届け人 (2ページ目)

西日本新聞 社会面 御厨 尚陽

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 いま、浩介は熊本県内のアパートに1人で暮らす。家賃は2万5千円。熊本、鹿児島、山口の3県26カ所に点在するプレハブ小屋をワゴン車で回る。計約80台の自販機がなりわいだ。売り上げを回収し、その土地ごとに売れ筋の商品を見定めて補充する。従業員はいない。1カ月の走行距離は2万キロにも達する。「トラックの運ちゃんより走ってる。車は数年で乗りつぶしちゃう」と笑い飛ばす。

 ばら色の日々は今や昔。かつての上客はインターネットに奪われ、最近の客の大半はスマートフォンが使えない高齢者だ。年の稼ぎは約3千万円に減った。

 小屋は、客が人目を気にせずこっそり入れるよう、人通りの少ない場所に置く。強みは土地代の安さ。賃料は月に約1万円しかかからない。売れなければ、トラックで小屋ごと別の場所へ移す。ごみ捨て場のように扱われることもあるため、小まめな掃除は欠かせない。「住民運動でも起こされたらたまらないからね」

 同業者は減り、自販機の製造会社も消えた。稼働している自販機の全てが20年選手。豪雨や地震は乗り切ってきたが、最大の懸案は24年に近づく紙幣の全面刷新だ。16年前の新紙幣導入時には機械の改造に1億円かかった。もうそんな金は出せない。さらなる規模縮小は必至だけれど、この道一筋で生きる覚悟だ。

 この自販機を頼りにしている高齢者は少なくない。90歳近くの常連客に、滋養強壮ドリンクのお使いを頼まれることもある。

 「元気なじいさんたちを見習って、僕もまだまだ頑張らないといけないね」

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 「NICHE(ニッチ) INDUSTRY(インダストリー)」は、英語で隙間産業を意味する。小さな分野や市場は時流の変化に影響を受けやすい。連載「NICHE-MEN(ニッチメン)-オレの仕事、アウトですか?」に登場するのは、隙間のさらに奥、吹けば飛ぶようなニッチな世界で実にたくましく、時にふてぶてしく生きる男たち。アダルト系、転売ヤー…。子どもが憧れる職業にはランクインしないが、需要があればこそ、存在するなりわい。あらゆる業種がコロナ禍で打撃を受けている今、見えにくい隣人の山あり谷ありの人生をお届けします。

 (本文は御厨尚陽、イメージイラストは大串誠寿が担当します)

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