「家族には内緒」成人向けゲーム制作、成功のその先は…

西日本新聞 社会面 御厨 尚陽

NICHE-MEN(ニッチメン)-オレの仕事、アウトですか?<4>

 圭輔(27)=仮名=が経営するゲーム会社には、表の顔と裏の顔がある。正式に公表している業務は、家庭用ゲーム開発の孫請け。世間に大っぴらにしていない顔は“18禁”のゲーム制作だ。「従業員の家族に見せるわけにはいかないから」。自身も親きょうだいには内緒にしている。

 手掛けてきたのは、アニメ調の美少女と会話し、疑似恋愛のシナリオを進めていくに従って「ごほうび」が待つタイプのゲーム。ただ、自身はこの種のゲームは「苦手。僕が作ると思わなかった」とも言う。それでも作るのは、CGを大量に使うわけではないため、従業員数十人規模でも手が出せるからだ。「規制が緩く、自由に作れる。アダルト目的のプレーヤーを感動させることもできたら、してやったりでしょ」。当てればでかいジャンルだ。家庭用ゲームへ移植されることもあれば、アニメ化、映画化の可能性だってある。一獲千金の夢を秘めた世界なのだ。

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 中学時代に母を亡くし、銀行員の父の下で育った。国立大に進み大手企業に就職したきょうだいとは対照的に、高校を中退。長崎県の実家でニート生活を送っていたころ、会員制交流サイト(SNS)上で遊べるソーシャルゲームが流行していた。思い立ってゲームの専門学校で学び、2012年から福岡市のソーシャルゲーム会社で働き始めた。

 「学歴はなくても、現場で力を磨けばいい」。すぐに頭角を現し、3カ月でプロジェクトを任された。19歳の月給は手取り40万円超。アルバイトから契約社員に出世した。その頃、業界ではソーシャルゲームそのものを「貯金箱」「ATM」と呼んでいた。質よりも、いかに利用者に課金させるかを競っていたからだ。

 そんなゲームばかりを求める経営陣に、入社2年目で「面白いゲームを作りたい」とたてついて煙たがられ、社内抗争にも巻き込まれて転職する羽目に。さらに転職先のゲーム会社は間もなく買収され、開発中の作品がお蔵入りになった。「起業するしかない」と14年に同僚と3人で独立。金も人手も足りない状況で乗り出したのがアダルトゲームの制作だった。

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 スマートフォン全盛の今、パソコン(PC)向けゲームの市場は細る一方だ。圭輔は店頭販売するPC向けのゲームを8カ月かけて完成させたが、全く売れず多額の負債を抱えた。そこで、低価格のゲームを量産し、ネットでダウンロード販売する手法に切り替えた。「中身より安さ。工場のように流れ作業で作った」。5年間で168本のゲームをリリースし、年間売り上げは1億円に。ブランド物に高級車、家賃18万円のマンションで独身生活を送る。

 成り上がりは果たした。でも満たされない。ゲーム開発の現場では「工場」への不満がくすぶり、創業時の社員全員が去った。反骨心を隠さなかった、かつての自身の姿がダブった。

 もう一度、可能性に挑戦したい。こんな自分を今も信じてくれる職人かたぎのクリエーターがまだいる。圭輔はもう一度、店頭販売向けゲームの開発に動きだした。全額自己資金で賄ってでも再挑戦する。「現場の熱い思いを忘れていた。売れる作品を作ってみせる」。自分の中にある燃え殻は、完全に消えたわけじゃない。

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