豪雨被災の天ケ瀬温泉にスーパー開店へ 大震災経験した夫婦の決意

西日本新聞 大分・日田玖珠版 中山 雄介

 東日本大震災を経験した布目光養(みつよし)さん(60)、留美さん夫婦(60)が大分県日田市天瀬町に移住する9日前、天ケ瀬温泉街を記録的豪雨が襲った。がれきが散乱した温泉街を目にした光養さんは、震災時に経営していたコンビニエンスストアに食料を求めて列をなす福島の人たちの顔が浮かんだ。「元気の源は食。温かい食べ物を届けたい」。ついのすみかと決めた天瀬でゆっくりしようと考えていた夫婦は、被災者に寄り添うスーパーの開店を決意した。

 2011年3月11日、布目さん夫婦は福島県郡山市のコンビニで、耳をつんざく地鳴りの後に、強烈な揺れに襲われた。店の棚という棚が倒れ、商品が散乱。電気や水道は無事ですぐに店を開けることができたが、強い余震が続き、商品供給は滞った。

 食料品の入荷を知らせる張り紙を貼ると、その日は店の前に人の列ができた。しかし予定通り入荷されず、夜遅くまで待っていた男性を光養さんは忘れられないという。

 原発事故による風評被害もあり、12年に福島を離れた。神戸市でコンビニ経営を始め、晩年は「暖かい地域で暮らそう」と夫婦で決めていた。留美さんが還暦を迎え、移住先を探し始めていた5月、日田市の移住案内をたまたま見つけた。縁もゆかりもないが、光養さんの出身地の北海道に似たのどかな雰囲気が気に入った。

 温泉街近くに中古物件を見つけ、7月16日に引っ越しする予定だった。その9日前、玖珠川からの濁流が天ケ瀬温泉街をのみ込んだ。すぐに駆け付けてボランティア活動に参加。光養さんが食料品を渡すと、被災者の顔に明るさが戻り、福島の記憶がよみがえった。「これからお世話になる地域を元気にするのも役目」。再び働き始めることに何のためらいもなかった。

 温泉街に唯一あったスーパーの空き店舗を借りた。開店は12月上旬を予定していたが、住民要望を受け早ければ今月下旬になる見通し。店名は「天ケ瀬ストア」と決めた。「例えば特産品を生かしたファストフードなど、この店でしか買えない商品を売り、人の流れを呼び込みたい」。布目さん夫婦は、新天地での新たな挑戦を楽しみにしている。 (中山雄介)

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