分断極まり「シビルウォー(内戦)」の懸念も 混乱に全米が緊迫

西日本新聞 総合面 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸】「率直に言えばわれわれが勝った」「勝利の軌道にいる」。大接戦となった米大統領選の開票が進む4日未明、トランプ大統領とバイデン前副大統領はそれぞれ支持者に自信を示した。一部の州では投票日後に到着した郵便投票も受け付けるが、郵便投票を「不正」と決め付けるトランプ陣営が訴訟を起こして決着が長期化する可能性もある。混乱はいつまで続くのか。全米が緊迫に包まれている。

 4日午前2時半前、ホワイトハウスで演説したトランプ氏は、その時点で主要メディアが当確を報じていない州を次々と挙げ「勝った。とてつもない大勝利だ」と宣言。集まった支持者からは歓声が上がった。

 この2時間前、バイデン氏は地元東部デラウェア州で支持者の前に登場。「いい気分だ」と声を張り上げ、接戦州の勝利に楽観的な見方を示した。

 新型コロナウイルス禍の影響で今回は郵便投票が急増。集計のめどは見通せない。歴史的な大接戦となり選挙結果が出ても、国民の間に禍根を残す可能性が高い。

 共和、民主の二大政党による対立は1990年代ごろから激化。国家的課題に超党派で妥協しながら前進する政治は徐々に失われた。2009年から2期務めた民主党のオバマ前大統領は「医療保険制度改革(オバマケア)」など数々の「変革」を打ち出したが、議会多数派の共和党が徹底抗戦。思うような成果を残せなかった。

 党派対立を反映して国民の亀裂も深まった。それを「断絶」とも言える状態に陥れたのがトランプ氏だった。移民政策などで排他的な政策を掲げ、批判されれば身内の共和党議員であれ、メディアであれ「敵」と位置付けて攻撃。一方で減税など支持者受けの良い政策を打ち出し、票固めに力を入れた。

 そんなトランプ氏の支持、不支持を巡り国民は真っ二つに割れた。トランプ氏が10月に新型コロナ感染で入院した際には、インターネット上にトランプ氏の回復だけでなく、病状悪化を願う投稿も相次いだ。

 対立を激化させた存在として、メディアにも厳しい目が向けられる。トランプ氏批判の論陣を張る主要メディアの一部は、選挙戦終盤に浮上したバイデン氏の息子に関する金銭疑惑の新情報にほとんど触れなかった。報道の中立性を捨てたかのような姿勢に、トランプ氏の支持者たちは特定のメディアを名指しして「最悪」コールを連呼し、不満を募らせた。

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 3日、南部バージニア州の投票所で票を投じた両候補の支持者に「今、米国に何が必要か」と尋ねると「結束」「平和」という同じ趣旨の答えが返ってきた。トランプ政権への評価は全く異なるが、混乱続きで「トランプ疲れ」に陥っているのは共通していた。

 それでもなお、バイデン氏の支持者は、トランプ氏の岩盤支持層を「カルト信者だ」と痛烈に批判。逆にトランプ氏の支持者は、警官による黒人暴行問題への暴力的な一部の抗議デモにも理解を示すバイデン氏の支持者を「過激派」と呼び、憤る。

 どちらの支持者も「こんなに分裂した選挙は初めてだ」と嘆き、「シビルウォー(内戦)のような事態は絶対に避けなければならない」と案じる声が上がる。

 ホワイトハウス周辺では不測の事態に備え、窓ガラスなどを割られないよう、建物の外壁部分に木の板が張り巡らされていた。それがいつ取り除かれるか、誰にも分からない。不穏な空気が街を覆う。

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