「臭い少ない」トイレ用凝固剤、防災の一助に 特別支援学校PTAに寄贈

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 地震や大雨などの災害の際に役立ててもらおうと、紳士服や婦人服、ヘルスケア用品の製造、販売を手掛ける株式会社「カインドウェア」(本社・東京)が、肢体の不自由な子どもが通う福岡市立の南福岡、今津特別支援学校の両PTAに、断水時にトイレで使える凝固剤を寄贈した。仲介したのは今津の元校長で災害備蓄管理士の森孝一さん(61)。「各家庭で防災意識を高めるきっかけにしてほしい」と願う。 

 10月23日、同市早良区にある通所型の障害者福祉施設。森さんは両校のPTA役員に、ボトル入りの凝固剤を500本ずつ渡した。

 同社からは段ボール箱100個分、計1200本が提供された。森さんが顧問を務めるこの施設にいったん届けてもらい、説明を兼ねて役員たちを招いた。

すぐ固まりごみに

 パウダー状で1本400グラム入り。液体に振りかければ数秒から30秒程度でゼリー状に固まる。7グラム当たり約450ccを吸収。簡易トイレでも自宅のトイレでも、便座にポリ袋をかぶせ、中に用を足すときに使えば「ほとんど臭いもなく、燃えるごみとして捨てることもできる」という。

 両校の児童生徒の多くは大型の車椅子を使う。中には人工呼吸器など複数の医療機器が必要な子どももいて、一般の避難所への移動は現実的ではない。「電気や水道が止まると一番、トイレに困る。災害時に自宅にとどまる可能性が高い家族に、優先的に使ってもらいたかった」。寄贈先にPTAを選んだ理由について、森さんはそう説明した。

熊本地震の教訓を

 カインドウェアは以前から社会貢献の一環として、災害時に救援物資を提供している。2016年の熊本地震では被災地に非常用の簡易トイレを送った。今年は、大規模水害が相次ぐ九州への支援先を一般社団法人「防災安全協会」(東京)に相談。同協会から、所属メンバーでもある森さんに打診があった。

 森さんは市教育委員会勤務時代に、熊本地震の被災地支援に従事。大規模災害では「高齢者や障害者向けの福祉避難所の開設もままならない実態を目の当たりにした」。経験を元に、市立の特別支援学校8校を災害時の「こども福祉避難所」として位置付け、市教委として防災推進マニュアルを策定。今津の校長時代には、宿泊訓練の朝食時に非常食を食べるなど「避難生活の疑似体験」も行い、障害のある子どもや家族の災害時支援に注力してきた。

 同協会から認定を受ける災害備蓄管理士の資格は、退官直前の今年3月に取得。「一般市民や企業も含め、まだまだ希薄な災害備蓄などの意識付けを高める活動を続けたい」と考えたからだ。

 新型コロナウイルスの流行により、在宅避難はますます増えるとみられる。「学校やPTAには、備蓄などの重要性を積極的に発信する役目も果たしてもらえれば」。残り200本も施設に保管し、地域の防災に役立てるつもりだ。

在宅避難の準備に

 この日、寄贈を受けた今津のPTA副会長、中島弥生さん(44)は、小学部2、4年の男児2人の母。森さんが同校への避難に積極的だったこともあり「これまではまず学校に避難すれば大丈夫と考えてきた」ものの、今年の台風被害などで「在宅避難に目が向くようになってきていた」という。「子どもが2人いて避難できないことも考えられるので、トイレに使える凝固剤は大変助かる。PTAとして備蓄している非常食1食分と合わせて、各家族に配りたい」と話した。

 同じく南福岡のPTA会長、因幡那水(なみ)さん(43)は夫や父親ら親族が消防の仕事に携わり、自身も防災士の資格を持つ。「自宅のトイレでは、まず1枚ビニールを敷いて、その上にポリ袋を重ねて凝固剤を使えば、固めた状態で2枚目のポリ袋のままごみとして回収に出せる」と使い方のこつを披露した上で、「平時に一度使って試してみておくことが非常時につながることも、親御さんたちに伝えていきたい」と語った。 (編集委員・三宅大介)

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