地域通貨「ロマン」八女市で記者が体験 人つなぎ町を再発見 

西日本新聞 筑後版 丹村 智子

 福岡県八女市で、市の移住・定住促進事業の一環として、地域通貨「ロマン」の流通が始まった。紙幣や実物のコインは存在せず、スマートフォンのアプリ内でたまったり減ったりする。一体どんなものなのか。使う価値はあるのか。初日の10月11日、記者も試してみた。

 スマホに専用アプリ「まちのコイン」をインストールする。参加記念で500ロマンがチャージされた。まず、ロマン開始と同じ日にオープンした西鉄バス福島停留所の待合所「つながるバス停」に行ってみた。QRコードを読み取るとチェックイン完了。チェックインでもらった50ロマンを使い、水筒に冷たい八女茶を詰めてもらった。

 おなかがすいたのでロマンを利用できる店をアプリで検索。近くの薬膳料理店「八女サヘホ」がロマン開始記念の「マロンカレー」を1日限定で出していた。代金と別に、必要な200ロマンを使って食べた。

 ロマンには現在、市中心部や上陽町、黒木町の35店舗・施設が加盟。多くが飲食や物販の店だ。ロマンを取り扱うことは煩わしくないのだろうか。空のカレー皿を前に浮かんだ疑問を八女サヘホ代表の中村忠和さん(48)にぶつけた。

 「ロマンの話を聞いた時、わくわくしました」。中村さんは前向きだ。「八女には地域のために頑張る人が多くいるのに、みな忙しく横のつながりに乏しい。ロマンはそうした人をつなぐツールになる」

 中村さんは、ロマンを使う催しとして、店で使っているしょうゆの店と一緒に発酵教室を企画している。ロマンの導入により、協力して地域を盛り上げようという機運も出ている。

 ロマンを開発した面白法人カヤック(神奈川県)はITによる地域創生に全国で取り組む。広報の梶陽子さんは「『この人に会いたい』という動機づけが人を動かし、自分のアイデアや起業を支えてくれる人がいる土地に移住することも。ロマンで仲間づくりをしてほしい」と期待する。面白い人の情報を発信し、関心を持つ人とつなぐことが、移住を後押しするという。

 記者が町を歩く間に「つながるバス停」では新たなサービスも生まれていた。ロマンの交換は原則、本人限定だが、スマホを持っていない人も訪れた。そこで同伴者にロマンをお裾分けできるようにしたのだ。操作は管理者がスマホを使い5分で終わる。「トライアンドエラーが容易なのも利点です」と市の担当者、溝尻竜夫さんは言う。

 一方、人手が少ない個人商店からは「忙しい時間帯にロマンの説明を求められても対応できない」と困惑の声も上がった。ロマンと交換する「体験」の案が浮かばず、導入に踏み切れていない店もある。

 寄り道してロマンをためるのは、オリエンテーリングのようで、いつもの町が新鮮に映る。スマホを持たない人の参加方法、加盟施設への支援、奥八女地域の加盟などの課題が解消されれば、楽しみはより広がりそうだ。 (丹村智子)

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