小水力発電で山麓自立へ 吉野ケ里・松隈地区の全世帯が出資

西日本新聞 社会面 北島 剛

 脊振山の南麓にある佐賀県吉野ケ里町松隈地区の住民が「自立した地域づくり」を目指して、小水力発電事業に乗り出す。昨年、会社を設立。国の固定価格買い取り制度(FIT)を活用し、9日から売電を始める。収益は地区の道路改良や水路の維持管理に充てる予定で、補助金頼み一辺倒ではない中山間地の存続方法として注目されそうだ。

 小水力発電は地区内を流れる田手川から取水し、小型コンテナ内にある発電機のタービンを回す。年間700万円を目標に売電収入を得て、うち約500万円を融資の返済などに充てて残りを地元に還元。九州大発のベンチャー企業「リバー・ヴィレッジ」(福岡市)が技術面でサポートする。

 松隈地区には約40世帯が暮らし、高齢化率は35%超。多良正裕区長(70)は「10年後や30年後を考えたとき、このまま年金生活者が増えると道路改良などが難しくなる。売電収入を維持管理費に充て、有償ボランティアをお願いすることもできる」と狙いを語る。

 佐賀県は2016年度、企業では採算を取るのが難しい出力30キロワットの小水力発電を地域振興につなげようと事業をスタート。水流で20メートルの高低差が確保でき、安定した発電が見込まれる松隈地区を適地と判断し、事業化を持ち掛けた。

 地区内にはかつて水力発電所が稼働し、住民にもなじみがあったため「反対する人はいなかった」と多良さん。昨年10月に全世帯の出資で「松隈地域づくり株式会社」を設立し、多良さんが代表となった。出資額は農家が5千円、非農家は4千円にとどめ、建設費約6千万円のほとんどは無担保融資でまかなった。

 装置は10月7日に地区に到着。試運転して水量の変化に対応した発電ができるかなどを確認した。

 県は松隈地区の事業を踏まえ、小水力発電で地域を運営する「佐賀モデル」をつくり、県内外への展開を目指している。多良さんは「高齢化率が高い中山間地が存続するには、補助金頼みになってはいけない。住民のアイデアと行動が未来につながるはずだ」と前を向く。 (北島剛)

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