ストーカー防止 精神医学の適切な活用を

西日本新聞 オピニオン面

 ストーカー規制法の施行から今月、20年を迎えた。この間、法改正による厳罰化などがあったにもかかわらず、問題が解消に向かっているとは言い難い。執拗(しつよう)な付きまとい行為が時として悲惨な殺人事件にエスカレートする現実を、私たちは見せつけられてきた。

 被害者救済は当然だが、ストーカー行為を未然に防ぐ対策こそ重要だ。そのために加害者への精神医学を用いた手法が有効とされる。適切に活用したい。

 ストーカーに関連する警察への相談は毎年2万件を超える。被害者の約9割は女性だ。加害者は元交際相手などが4割を占め、多くは警察の警告や禁止命令で付きまとい行為を一度はやめるものの、やがて再発し逮捕されるケースが少なくない。

 心の歯止めが大切だ。ストーカー行為をした者に全国の警察が昨年、医療機関での治療を働き掛けたのは824人に上る。この取り組みを始めた2016年以降で最多という。

 再発の恐れがある加害者の同意を得た上で、精神科医に経緯や現状を説明し、診察の必要性が認められれば治療に入る。ケースごとに原因を分析し、被害者側への執着心や支配意識をなくすことが目的だ。

 昨年受診した124人のうち再びストーカー行為をしたのは10人にとどまった。一昨年も同じ傾向にあり、気持ちを解きほぐしていく手法が一定の対策となり得ることが分かる。

 精神医学の再犯防止への活用は近年、性犯罪にも導入され、成果が報告されている。

 ただ、課題もある。ストーカーの場合「悪いのは自分を裏切った相手だ」といった思い込みが目立ち、再び付きまとうケースも少なくない。強迫性精神障害など症状が重い人は、治療の継続が必要という。

 さらに、診療費が重い負担となる人も多い。福岡県警はストーカーの加害者が3回まで無料で精神保健福祉士と面談できる仕組みを導入した。京都府警も同様の支援策を設けた。警察はかつて、男女間の感情のもつれなどに伴う付きまとい行為には「民事不介入」の原則を守ってきたが、大きな変化だ。

 2000年施行のストーカー規制法は、前年に埼玉県で起きた桶川ストーカー殺人事件が制定の引き金となった。九州でも11年、長崎県西海市でストーカーの男に女性2人が殺害される事件が起きた。

 新たな課題として衛星利用測位システム(GPS)機器の悪用がある。車などに取り付けて離れた場所から相手を監視する行為を取り締まるため、警察庁が規制法の改正を検討中だ。時代に即した対応が求められる。

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