国会予算委論戦 問われる首相の「答弁力」

西日本新聞 オピニオン面

 厳しい野党の質問であっても首相が的確で説得力のある答弁をしてこそ、国会論戦は深まっていく。首相にとっては自らの政治姿勢や政権運営の方針を国民へ説明する場でもある。

 事前に官僚が用意した文書の棒読みや「言えない」の一点張りで追及を避けるようでは、首相の「答弁力」が問われよう。

 臨時国会は衆参両院で予算委員会が行われた。野党側は、日本学術会議が推薦した105人のうち6人の会員候補を菅義偉首相が拒否した問題を集中的に取り上げた。なぜ、この6人に限り任命を拒んだのか。前代未聞の人事であり、野党が理由の説明を求めるのは当然だ。しかし、首相の説明はその場しのぎのような発言の連続で一貫性に欠け、矛盾すらはらんだ。

 首相は当初「総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から判断した」などと語ったが、抽象的で分かりにくいという声は与党内からも上がっていた。

 すると、国会で首相は「民間出身者や若手が少なく、旧帝国大学を中心とする大学にも偏りがある。多様性を念頭に判断した」などと答弁した。

 ところが、拒否された6人のうち3人は少数派とされる私立大の教授だった。最年少は50代で、女性の候補もいた。

 野党から「矛盾している」と批判されると、今度は「個々人の任命の判断とは直結しないが」と前置きして、学術会議は「閉鎖的で既得権益がある」と主張し始めた。推薦通りに任命する「前例踏襲でいいのか」という問題意識は首相就任の以前からあったとも語った。

 それでも、任命拒否の理由は「個別人事のことは言えない」としか答えない。首相が核心部分の答弁をしない以上、押し問答の繰り返しとなるのは当たり前だ。答弁資料の文書を何度も読み上げ、小まめに秘書官らの助言を受け、窮すると官房長官が代わって答弁する。「首相は自分の言葉で国民に語ってほしい」-そんな野党の注文を首相は謙虚に受け止めるべきだ。

 新たな事実も浮かんできた。首相は自分が決裁したのは6人を除いた99人の名簿で、学術会議が推薦した全体の名簿は「見ていない」としていたが、実は杉田和博官房副長官から事前に6人を除外する報告を受けていたと明かした。こうした過程を記録した文書の存在も判明したが、政府は公表を拒んでいる。

 首相は、政府と学術会議の事前協議がなかったことが任命拒否の要因との新たな見解も示した。野党は「学術会議の運営に対する政治介入だ」と反発している。こじれた問題の解決に向け、杉田氏の国会招致と関係する文書の公開を求めたい。

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