続く「自国第一」の民意 普通の人々が願った4年は「失敗」か

 「負けたら自業自得」。トランプ米大統領を支持する中西部の激戦州ウィスコンシンに住む白人男性(63)が今夏、トランプ氏の大統領選での敗北を覚悟して口にした言葉だ。

 4年前、政治経験はないが「不動産王」と称された実業家に、主に地方の白人中間層は強いリーダー像を重ね、格差社会の中、長く閉塞(へいそく)感が漂う現状の打破を託した。「これは実験だ」と呼ぶ人もいた。

 異論を唱える者を「敵」とみなし、容赦なく攻撃する排他的な政治に国民は振り回され、米国社会はかつてない分断状態に陥った。多くの有権者が、半世紀近い国政歴を誇るバイデン前副大統領の安定感を求めたのは自明の理だった。

 とはいえ、トランプ政権の4年間を「失敗」の一言で片付けられるだろうか。

 トランプ氏の選挙集会に足を運ぶと、彼の全てを受け入れ「愛してる」と絶叫する狂信的な“トランプ信者”は確かにいる。ただ耳を傾ければ、支持者の多くは「ぜいたくはいらない。少しでもいい暮らしを」と願うような普通の人々だ。

 新型コロナ禍への失政や、敵を傷つける乱暴なツイッターに不満を抱く人も少なくない。それでも支持しているのは物議を醸す公約であれ、政治の常識にとらわれず実行に移そうとする姿勢が「約束を守り結果を出した」と映ったからだ。

 「米国第一主義」に基づく内向きな公約は、支持者をつなぎ留めるポピュリズムに他ならない。だが、経済対策では減税と規制緩和により雇用増や賃上げの成果を生んだ。共和党伝統の「小さな政府」に反するばらまき政策も、農家など自身の支持層のためならいとわなかった。

 今、多くの国民が政治に欲するのは、将来に希望を抱けない中低所得層に、目に見える果実をもたらす現実的な対応であり、前例にとらわれない突破力だ。トランプ氏が去っても、自国中心の成果を渇望する内向きの民意は続く。

 欧州などでも強まるこの潮流を、バイデン氏も無視できない。掲げた政策を着実に実行できなければ、国民から早晩に見限られ、不満や怒りがさらなるうねりとなって噴き出してくるだろう。

 今後、トランプ氏が子息の擁立を含めて次期大統領選をにらんだ行動に踏み出す可能性すらある。新たな「実験」はいつでも起こり得る。 (ワシントン田中伸幸)

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