TPP復帰に慎重 不透明感漂うバイデン氏の通商政策

西日本新聞 総合面

 バイデン前副大統領は、新型コロナウイルスの感染収束と経済再生という相反するような課題を同時に解決する難しい経済運営を迫られる。社会保障拡充が主眼の大幅増税は、消費や投資に打撃を与えて世界経済全体にも影響を及ぼしかねない。環太平洋連携協定(TPP)への復帰には慎重で、通商政策など対日姿勢にも不透明感が漂う。

 「Build Back Better(より良い再建)」をキャッチフレーズとするバイデン氏の経済政策は、新型コロナの影響で急激に悪化した経済を立て直すことに力点を置く。感染拡大という失政を覆い隠すべく経済活動の早期全面再開を訴えたトランプ大統領と異なり、ワクチンなどが普及していない中での再開には慎重姿勢だ。

 製造業を中国から取り戻すというトランプ氏の主張が国民に受けたことから、バイデン氏も踏襲。製造業と雇用を維持するため、4年間で公費4千億ドル(約41兆円)を投じる米国製品購入といった国内産業優遇策を示す。中国依存のサプライチェーン(部品の調達・供給網)の見直しも訴えており、日本の輸出関連業にもしわ寄せが来そうだ。

 手厚い社会保障や格差是正にも注力。トランプ氏と違い、環境政策では再生エネルギーなどのインフラに4年間で2兆ドルを投じるとも表明している。環境・省エネ技術で先行する日本企業が、大型投資にうまく乗れるかも注目される。

 一方、財政支出拡大による景気押し上げを期待する声があるが、財源はトランプ政権下の減税で恩恵を受けた大企業や富裕層への課税強化が中心。景気減速下での大増税への警戒感が強い。ただ、共和党が上院の過半数を維持し、政権と議会の「ねじれ」が続くことになればバイデン氏にとって大きな制約となるため、大増税などの可能性は低下するとの見方が広がる。

 バイデン氏の外交姿勢は対話路線が軸だが、オバマ政権下で進み、トランプ氏が就任初日に離脱を決めたTPPへの復帰には否定的な見方が支配的だ。

 そもそも「民主党は共和党より自由貿易に積極的ではない」(大和総研ニューヨークリサーチセンター・矢作大祐研究員)ことに加え、トランプ氏の「TPPは米国にとって不公平」との訴えが世論に深く浸透している。バイデン氏も「見直しがない限り復帰はない」とのスタンスで、早期復帰は期待できそうにない。

 新たな自由貿易協定(FTA)を巡っても、トランプ政権と安倍前政権が進めた物品貿易協定交渉では、自動車・同部品などが積み残しとなっており、米国による追加関税の懸念はくすぶる。新交渉の有無も含め、バイデン氏の出方は見えていない。

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