バイデン氏「国際協調」主導なるか 対日では思いやり予算増も

西日本新聞 総合面 古川 幸太郎 久永 健志 田中 伸幸

 米大統領選で勝利が確実となったバイデン前副大統領は、トランプ大統領の下で孤立化が進んだ米国を国際協調路線に戻し、信頼回復を図る方針だ。安全保障や経済を巡り激しく対立する中国には当面、強硬姿勢で臨むとみられる。ただ沈静化への道筋は描けておらず、トランプ氏が日本など同盟国に「公正な負担」を要求したり、追加関税を課したりした「米国第一主義」が国内で理解を得る中、バイデン氏の外交方針には不鮮明な点も少なくない。

 「東アジアの平和を守るため同盟を強化する。部隊を撤収すると脅したりはしない」。バイデン氏はこう述べ、海外に駐留する米軍の削減や撤収をたびたび示唆し、同盟国から自国の利益を引き出そうとしたトランプ氏を強く批判する。

 現政権が4日に正式に離脱した温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰も明言するなど、同盟国や友好国、国連など国際機関との協調重視は明確だ。

 上院議員やオバマ前政権の副大統領として訪日歴があるバイデン氏は、同盟国の重要性を理解する「外交通」(バイデン氏元側近)。対日外交は比較的穏当な路線に戻り、トランプ氏に揺さぶられた日米関係は落ち着きを取り戻すとの見方が強い。菅義偉首相はバイデン氏と早期に信頼関係を築き、日米同盟の重要性をアピールしたい考えだ。

 一方、バイデン政権の対中政策には懸念が広がる。

 「貿易戦争」や新型コロナ禍を受けトランプ氏が中国を激しく攻撃し、米国内の反中感情は依然高い。議会も超党派でウイグルの人権問題などを非難し、強硬姿勢を強めている。バイデン氏はこうした動向を無視できず、選挙戦では中国に厳しい態度を示した。

 問題は、バイデン政権の閣僚候補の中に「かねて『日本は同盟国として大局的な役割を果たしていない』と不満を持つ人がいる」(日米外交筋)点だ。バイデン氏が対中強硬策を講じる事態となった場合、日本に具体的な協力を求めてくる可能性は否定できない。

 オバマ前政権は中国の台頭を過小評価したとの批判がある中、バイデン氏がオバマ路線に転じるとの指摘も少なくない。バイデン氏が対話路線に転じる場合、日米で意思疎通を欠けば混乱する事態も想定される。

 対北朝鮮政策も影響を受けそうだ。菅首相は国会の所信表明演説で、米朝首脳の対話路線を念頭に、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との「前提条件なしの対話」に意欲を示した。しかし、バイデン氏は直接対話に否定的。オバマ前政権の「戦略的忍耐」に戻れば、日本は戦略の練り直しを迫られる。

 バイデン氏は副大統領時代、2015年の日韓合意の「仲介役の一人」(米政府関係者)とされる。悪化した日韓関係の改善に向け、日本にどのような行動を求めるかも注目される。

 来年度から5年間の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を巡る交渉が今後本格化するが、バイデン政権が、日本側に現行の4倍の負担増を求めたとされるトランプ路線を修正するとは限らない。日本側は当面1年間、現行の負担額を継続する「暫定合意」も視野に入れるが、筋書き通りに運ぶ保証はない。外務省幹部は「どうなるか読めない」と警戒感をにじませる。 (古川幸太郎、久永健志、ワシントン田中伸幸)

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ