茶殻を食べて健康に 藤崎真二

西日本新聞 藤崎 真二

 これこそコロンブスの卵の発想ではないかと思えた。

 茶を入れた後の急須に残った茶葉は、茶殻という言葉もあるように、捨てるのが一般的だろう。それをなんと、その茶葉を食べるのだという。

 ビタミンやミネラルなど茶に含まれる栄養素は知られている。だが、茶が持つ栄養の70%は茶葉に残ったままという。あまりにもったいない。そんな思いから、茶葉を食べる習慣を世の中に広めようという運動が始まった。

 茶を食べる野菜と考える「菜茶プロジェクト」がそれ。思いついたのは福岡市早良区の高橋実さん(79)だ。

 食品の商品開発やメーカーと小売をつなぐ仲介業を営んでいた高橋さん。長年の経験と知恵、人脈を生かし、食べる習慣を定着させるために何が必要かを考え、それを解決する計画を練った。

 まず急須と食器を一体化したデザインを考案。有田焼を手がける知人を介し窯元や佐賀県窯業技術センターとも協力。茶を入れることができ、残った茶葉をスマートに食べられる茶器を開発した。

 肝心の茶は飲んでも食べてもおいしい茶葉を探し出し、佐賀・嬉野茶、長崎・そのぎ茶の玉緑茶に行き着いた。さらに各地の産地にも商品化を呼び掛けている。

 食べる際にはうま酢、しょうが蜂蜜などで味付けし、食べ方の作法も提案している。

 高橋さんが食と健康に関わるようになったきっかけは、科学的な食事法などを紹介した本「老化は食べ物が原因だった」に出会ったこと。細胞の再生など体の仕組みや構成を知った。本紙連載「食卓の向こう側」では添加物や環境問題への視点を学んだ。

 そんな食と健康の問題を消費者目線でまとめた情報満載の解説本「魚肉菜穀(ぎょにくさいこく)」を2017年に出版。有効とされる食材や健康法を暮らしに取り込み、自身が実験台になり得られた答えを盛り込んだ。

 食生活アドバイザーの資格も取得するなど食を追求する中で「伝統食」の素晴らしさにたどり着いた。そこでお茶のパワーも再確認する。抗酸化物質で殺菌力もあるエピガロカテキン、免疫力に関わる腸内環境を守る食物繊維…。専門家の著書などを調べるほどに思いは確信に変わった。

 「ありふれたことを茶飯事というが、日々繰り返される習慣こそ一番大切」と高橋さん。最も身近にある飲料であるお茶を見直し、食べる習慣を普及させようという挑戦は始まったばかりだ。

 大事な茶葉の味はどうか。ちょっとした苦味がお茶好きには、病みつきになりそうだ。 (論説委員)

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