「二つの苦しみ」思わぬ形で傷つくことも…LGBT、コロナ禍の不安

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

支援団体の三浦暢久さんに聞く

 新型コロナウイルスの収束の兆しが見えない中、LGBTなど性的少数者が生活に不安を抱えている。自分やパートナーが感染した場合、性的指向や性自認といった情報を周囲に知られないか。性的少数者のカップルを夫婦と同等に認める公的な制度は、役割を果たしているか。当事者を支援する福岡市のNPO法人「カラフルチェンジラボ」の三浦暢久代表理事(43)に聞いた。

 -感染を巡り、当事者にはどんな不安がある?

 「私を例に挙げれば、私は30歳の時、ゲイであることをカミングアウトした。今は男性パートナーと同居している。仮に私が感染すれば、保健所に生活状況や行動履歴を聞かれ、パートナーと住んでいることを話すことになる。おそらく彼は濃厚接触者になり、勤務先への報告が必要になる」

 「その場合、彼が自分の性的指向を周囲に話していないと、予期しない形でカミングアウトをすることになる。職場などで偏見の目にさらされ、耐えかねて仕事を失うこともあり得る。保健所などの行政機関が、どこまで性的指向や性自認といった個人情報を守ってくれるか、不安がある」

 -当事者団体や支援組織と連名で、そうした点を福岡県に要望した。

 「生まれ持った体と心の性が異なるトランスジェンダーの人もいる。こうした人の場合、一緒に住む家族やパートナーが感染し、濃厚接触者としてその人の性や家族構成が公表されれば、そこから『あの人じゃないか』と個人や戸籍上の性別を特定される恐れがある。情報の公表は当事者の意向を尊重し、十分に配慮してほしい目的があった」

 -性的少数者が思わぬ形で傷ついた例もあった。

 「ある都市では会員制の飲食店でクラスター(感染者集団)が発生した。すると、『会員制』という言葉から、そこにいて感染した客は性的少数者だとインターネット上で流れた。結果として個人が特定されてしまった。当事者は感染による差別と、LGBTであることによる差別と、二つの苦しみを背負う。性的少数者への偏見は、まだまだ残っている」

 -この間、当事者からはどんな声が寄せられた?

 「性的少数者のカップルが家族として扱われるのか、という不安があった。カップルを夫婦と同等の関係として公に認める制度はあるが、感染して入院したパートナーの状態を病院で説明してもらえるか。休校で家にいる相手の子どもの面倒を見るため、仕事を休めるか。不安に社会や企業が応えられたか、検証も必要になると思う」

 「プライバシーの確保や、本人が望まない形のカミングアウト、本人の性的指向や性自認を他人が了解なく第三者に暴露する『アウティング』など、当事者は日頃から不安を抱えて生きている。コロナの感染拡大で、これらの危険性がさらに高まった。コロナだけでなく、災害などの非常事態ではLGBTのような少数派は排除される傾向にある。理解を深めてほしい」

 (編集委員・河野賢治)

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