「党が分裂してしまう」民主結束揺るがす対立 左派が圧力融和難しく

西日本新聞 総合面 田中 伸幸

【再生 バイデンの米国】(2)

 「歴史上最も幅広く多様な連合を組んだことを誇りに思う」。7日夜、地元の東部デラウェア州で勝利宣言した民主党のバイデン前副大統領は、民主党のみならず共和党支持者の一部も「反トランプ大統領」の下で団結したと胸を張った。

 だが、喜びもつかの間、その団結は足元からほころびの兆しを見せる。

 事前の世論調査ではバイデン氏の勝利に加え、同日実施の上下両院選でも民主党が多数を占めるとの予想が目立ったが、現時点では共和党が善戦。上院での過半数確保は険しくなり、過半数を維持する下院でも議席を減らす見通しだ。

 苦戦の原因とみられるのが「進歩派」と呼ばれる党内左派の存在だ。国民皆保険制度の導入や警官による黒人暴行事件の多発を受け、警察解体や予算削減を声高に訴える勢力。若者を中心に熱狂的に支持され、その代表格がバイデン氏と党の大統領候補者争いをしたサンダース上院議員だ。

 2016年の党予備選ではクリントン元国務長官とサンダース氏が激しく対立。党内にしこりを残したことが、トランプ氏勝利の一因となった。同じ轍(てつ)を踏まないため、穏健派のバイデン氏は左派政策も政権公約に受け入れ、党内融和を図った。

 こうした党内事情を突こうと、トランプ氏は今回の大統領選で民主党に「社会主義」とのレッテルを貼り「バイデンは左派の操り人形だ」と攻撃。民主党が警察解体をもくろんでいるとの批判も繰り返し、地域の安全に敏感な保守層や無党派層の不安をあおった。

 共和党系の団体幹部で保守派のクリフ・リーさん(54)は、新型コロナウイルス対応の責任を取ろうとしないトランプ氏に憤り、バイデン氏支持に転じた。だが「社会主義や警察予算削減を唱える左派は公衆の敵」と酷評し、議会選では共和党候補に票を投じた。

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 あおりを食ったのは、党内主流の穏健派だ。辛うじて再選を果たした女性下院議員は、選挙直後の会合で「社会主義という言葉は二度と使うべきではない」と不満をぶちまけた。

 一方、左派はさっそく重要閣僚の人事を巡り「財務長官に(最左派の)ウォーレン上院議員を」と求めるなど休戦状態だった党内対立が再燃しつつある。

 共和党が上院で多数派を死守した場合、バイデン氏は重要法案を成立させるため妥協の道を探るとみられるが、穏健色を強めれば左派からの突き上げは避けられない。彼らの要求がエスカレートすれば、共和党につけ込む隙を与え「民主党=社会主義」との批判がさらに高まりかねない。

 オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏には、14年の議会中間選挙で共和党に上下両院の多数派を握られ、政権が「死に体」と化した苦い経験がある。その悪夢を避けるためにも党内融和は欠かせない。

 ただ、サンダース氏が米メディアの取材に「格差改善へ最低賃金の引き上げが急務だ」と強調したように、新政権に左派政策を積極的に取り入れるよう圧力を強めることは必至だ。

 「党が完全に分裂してしまう」。社会主義批判に伴う支持離れに直面した穏健派からは早くも、22年の中間選挙を案じる声が上がっている。 (ワシントン田中伸幸)

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