台風上陸ゼロ 次の災害への備え着実に

西日本新聞 オピニオン面

 木枯らしの季節が近づき、今年も台風シーズンが終わろうとしている。このままいけば、2008年以来12年ぶりに日本への「上陸ゼロの年」となる。

 列島周辺の高気圧などが進路を阻んだことが大きな要因だ。ただこれは気象環境の偶然にすぎず、今後も台風が大きな脅威であることに変わりはない。

 風水害への備えには時間が必要である。当面は残る台風の発生情報に注意しつつ、来年以降をにらんだ長期的対策を官民一体となり確実に進めたい。

 台風は平年で年間25・6個が発生する。うち11・4個が日本に接近(今年は7個)し、2・7個が上陸する。

 今年はおととい、フィリピンの東で22号が発生した。統計に従えば、残り3個程度が12月にかけて生まれることになる。

 九州に住む私たちにとって、今年の「上陸ゼロ」は実感に乏しいかもしれない。9月上旬に「史上最強クラス」とされた台風10号が九州西岸を北上した記憶がまだ新しいからだ。気象庁は数日前から繰り返し異例の警戒を呼び掛け、必需品の買い出しに行列ができた。

 かつてない緊張が社会を覆ったのは、国内で毎年のように続く大きな風水害の経験からだ。10号接近の2カ月前には、記録的豪雨により熊本県の球磨川などが決壊し、流域に甚大な被害をもたらしたばかりだった。

 10号は結局、予想より早く勢力が減退し、九州へは「接近」にとどまった。結果として予想されたほどの被害はなかったものの、私たちが学んだのは「早め早め」かつ「大きく構える」防災対策の必要性である。

 今年の風水害だけでも教訓はいくつもある。何といっても、熊本県南部に豪雨をもたらした線状降水帯は依然として予測困難である点を指摘したい。

 線状降水帯は積乱雲が次々に発生して大雨が長時間続く現象だ。積乱雲のもとになる水蒸気は海上で生み出されるため、気象庁は気象観測船を使った洋上観測を始める。それでも、発生を半日前に予測できる技術の確立に10年ほどかかるという。気象予報技術の全体を底上げする中で早急に実現してほしい。

 一方、国土交通省は風水害対策として、ビル上層階に避難者受け入れスペースを整備する場合、工事費用を補助する方針を打ち出した。新型コロナウイルスの感染者対応で宿泊施設での隔離が採用されたが、災害の避難先としても活用できる。各自治体で準備を進めるべきだ。

 地球温暖化の影響で海水温が上昇し、台風の源となる水蒸気が大量に生まれている現実を直視したい。私たちも備えを整えるペースを上げねばならない。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ