11月5日は世界津波の日 「事前復興」を考える好機に

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え(27)

 11月5日は世界津波の日というのはご存じですか。前にご紹介した説話「稲むらの火」の1854年安政南海地震にちなみ、日本政府の提案で2015年に国連総会で決議されました。

 ただ世界では東日本大震災の「3・11」の発信力に比べると、なかなか定着しないようです。専門家や政府が旗振りをするより、一人でも多くの被災経験者が語り部となる方が、今を生きる伝承者としての強いメッセージが伝わるのです。

 九州では原発も含め防災訓練をした自治体も多かったようです。訓練に加え災害に強いまちづくりを市民と自治体がともに考える日になればと思います。国連決議には伝統的知識の活用と早期警報、「より良い復興」を通じた災害への備えを認識することの重要性も掲げられているからです。

 避難訓練だけでなく、避難場所に最短距離で逃げられる歩道整備など抜本策を考える機会になれば、もっと命が助かりやすい地域になると考えます。

 前回、災害の発生を想定し、被害最小化につながる都市計画やまちづくりを推進する「事前復興」について紹介しました。被災から年月が浅く復興もままならない中で、節目の日にその議論をというのは、はばかりもあるでしょう。その点で、一つの歴史として受け止められる「11・5」は絶好のチャンスです。

 例えば、被災市街地復興特別措置法では2年を限度に建築行為などが制限されます。しかし2年という期間は、住宅を再建できない被災者には長い時間です。その短縮のためにも事前に復興の青写真を描いておくのは無駄ではありません。

 2017年九州北部豪雨の翌年、福岡県朝倉市で市と住民による地区別復旧・復興推進協議会が開かれました。ある地区で被災後に火災が続発している問題も話し合われました。ため池が豪雨で流されて消失したため、地主の方が新しい防火槽の用地を無償提供するとおっしゃったおかげで造ることができたのでした。

 自治体の公共事業を巡っては、計画段階で用地が転売されて取得費が高騰し、結局実現できなかった事例を世界中で見てきましたので、朝倉市の地権者の自己犠牲的な申し出にひそかに感動を覚えていました。

 特に自治体単独でなく、河川流域全体の複数の自治体と、その住民とともに、どう水防を図るかコンセンサスを得るのは至難の業です。普段から時間をかけて「事前復興計画」を検討しておく必要があります。災害後の土地の問題も災害前に約束しておくと、よりスムーズに進むと考えます。

 (九大准教授)

 ◆備えのポイント 被災市街地復興特別措置法は、1995年の阪神淡路大震災をきっかけにできた法律です。大規模な災害に遭った市街地の緊急かつ健全な復興のため、対象地域を指定して2年を上限に建築制限などの特別措置を講じ、市町村が土地区画整理事業などの市街地開発や地区計画などの都市計画を行えることになりました。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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