またダムに翻弄されるのか…熊本の地元住民「知事の言葉で説明を」

西日本新聞 社会面 中村 太郎 村田 直隆 綾部 庸介

 12年前に「白紙撤回」したダム建設を熊本県が容認姿勢に転じた背景には、国の協力で模索した「ダムによらない治水」の実現が困難な上に、近年の気候変動に伴う想定外の豪雨で多大な犠牲を出したことへの反省がある。ただ、清流とともに生き、ダム計画に翻弄(ほんろう)された住民の賛否は割れており、県による正式表明後も流域全体の合意を得るのは容易ではなさそうだ。

 2008年9月、ダム反対の民意を受け、計画の白紙撤回を示した蒲島郁夫知事。根拠として、ダム受益地である人吉市と、建設予定地の相良村の両トップの反対を挙げた。

 これを受け、09年に誕生した民主党政権は建設中止を表明。国はその前提として「地元が代替策を決めること」(当時国土交通相の前原誠司衆院議員)とした。

 だが代替策の協議は難航。国が19年6月に示した10の案は、費用約2800億~1兆2千億円、工期50年超。関係者の多くが「実現不能」と感じ、協議は事実上ストップした。

 一部で宅地かさ上げなどが進められたが、球磨川の「治水力」は約1万2千戸が床上・床下浸水した1965年当時から更新されず。そこを今回の豪雨が襲い、河川の氾濫で50人が亡くなった。

 それでも流域の民意は割れている。自宅の1階天井まで浸水した川口重行さん(72)=芦北町=は「人命が一人でも多く救われるのであれば」とダムに賛成する。一方、豪雨被災者らでつくる「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」の川辺敬子さん(62)=人吉市=は「多くの住民はダムを望んでいない。決壊や緊急放流といったダムのリスクも示して」と言う。

 蒲島氏は近く、ダム容認への方針転換を正式表明する見通し。長年、アユ釣り客相手の商店を営む母を失った平野みきさん(49)=球磨村=は「知事がどんな言葉で表明するのか、きちんと聞きたい」と話した。

(中村太郎、村田直隆、綾部庸介)

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