川辺川ダム「地元の判断なら、あり」 中止表明から11年、前原氏語る

西日本新聞 総合面 鶴 加寿子

 7月の豪雨で熊本県南部の球磨川が氾濫し、甚大な被害が出たことで建設の是非が再燃した川辺川ダム。2009年の民主党政権時、国土交通相として建設中止を表明した前原誠司衆院議員に、当時の判断の背景と現在の議論をどう見ているかを聞いた。 

 ―国交相の就任会見で川辺川ダム建設計画の中止を表明した。理由は。

 「莫大(ばくだい)な財政赤字がある中で聖域なく歳出を見直し、税の使途を『コンクリートから人へ』と見直すことが政権交代の目的。公共事業は動きだしたら止まらない。計画決定から40~50年たっても本体工事に至らないダム事業は現代にあっても必要なのか見直すべきだと考えた」

 「川辺川ダムは潮谷義子前知事が慎重姿勢で、蒲島郁夫知事は明確に反対していた。また政権交代前から地元で意見交換を重ね、人吉市の住民から『(球磨川上流の県営)市房ダムの完成で水位が急に上がるようになった。ダムが水害を誘発するのでは』という不安も聞いた。地元の意向を踏まえて最終判断した」

 ―それから11年。国、県、流域自治体が検討を続けた「ダムによらない治水」は結論が出ないままだ。

 「川辺川ダムの建設中止は地元が代替策を決めることが前提だった。国は費用面や技術面などの協力を約束した。検討した代替策は完成までの年数や費用などハードルがあると思うが、代替策が何も実行されないまま、7月の豪雨で犠牲者が出たことに心が痛んだ」

 ―ダムがあれば被害の程度は違ったとの見方がある。中止の判断は誤りだったと思うか。

 「ダムが全てを解決するわけではない。18年の西日本豪雨では、愛媛県の二つのダムが満杯近くになり緊急放流したところ、川があふれて犠牲者が出た。全て結果論だ」

 ―川辺川ダムと同時に中止を決めた八ツ場(やんば)ダム(群馬県)は、民主党政権下で建設再開に転換。完成間近だった昨年10月の台風19号で治水効果が注目された。

 「建設再開は後の国交相が決めた。政権の看板政策を下ろすことに私は忸怩(じくじ)たる思いだった。八ツ場ダムの治水効果に関しては科学的、客観的な分析が必要だ。民主党政権がやったことは全部駄目だと否定する風潮があるが、本当に役立ったのか、問題点はなかったのか、検証すべきだ」

 ―熊本県ではダムも選択肢に含めた治水策が検討されている。

 「私はダムの検証を進めたが、『絶対に必要ない』とは言っていない。一定の治水効果があり、ダムを選ぶことも地元の判断としてあっていい」

 「09年当時はなじみがなかった線状降水帯による豪雨が頻発するなど、地球温暖化の影響をシビアにみて治水策を検討すべきだろう。市房ダムとの同時緊急放流を避ける運用が可能になったのか否かも、議論のポイントだ」

(聞き手は鶴加寿子)

◆前原誠司氏(まえはら・せいじ) 京大卒。松下政経塾、京都府議を経て93年衆院初当選。民主党代表、国土交通相、外相、国家戦略担当相、民進党代表などを務めた。58歳。京都2区、当選9回。現在、国民民主党代表代行。

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