米中対立、緩和見通せず 環境問題が糸口の可能性も

西日本新聞 国際面総合面 坂本 信博 田中 伸幸

【再生 バイデンの米国】(3)

 名指しこそ避けたものの、次の米大統領へのけん制であることは疑いようがなかった。「唯我独尊であるべきではなく、国際秩序を壊す一国主義と保護主義に反対する」。中国の習近平国家主席は4日、世界各国から約2800社が出展して上海で開かれた中国国際輸入博覧会で訴えた。

 演説でアピールしたのは自らが掲げた新戦略「双循環」。内需と外需の双方を好循環させて安定成長につなげる構想だが、力点は内需拡大にある。トランプ米大統領が中国経済とのデカップリング(切り離し)を強調する中、14億人の人口規模を生かした中国国内経済の大循環を柱に、苦境を乗り切る構えだ。

 習氏は、アジア・アフリカ諸国のインフラ整備や新型コロナウイルス対策を積極的に支援し、巨大経済圏「一帯一路」の構築も進めている。この日の演説で「双循環は世界にとっても有益だ」と強調した。共産党一党支配のよりどころである経済成長が鈍る中、米国に対抗する姿を示すことで支持をつなぐ狙いもある。

 とはいえ「米中対立の先鋭化は避けたいのが習指導部の本音」(日中外交筋)だ。中国にとって米国は最大の貿易相手国(2019年時点)。米国によるハイテク製品禁輸措置の打撃も深刻で、中国誌は「核心技術で首根っこを押さえられている」と報じる。

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 対中強硬姿勢を継続するのか、転換するのか。米大統領選を制した民主党バイデン前副大統領の方針はまだ見えない。

 バイデン氏が副大統領を務めたオバマ前政権は、気候変動問題を巡り中国と協力した局面もあった。次期政権の優先課題としてバイデン氏が温暖化対策を掲げる一方、習氏も60年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにすると表明した。環境問題が米中協調の糸口になる可能性はある。

 しかし、トランプ氏の強硬路線を反映し、米国民への世論調査では7割以上が「中国を好まない」と回答。反中感情は大幅に悪化した。議会も超党派で対中強硬論が高まったままだ。南シナ海での軍事活動など中国が国際ルールに反する行動を続ける中、「バイデン氏も厳しい姿勢を取らざるを得ない」(米国の東アジア外交専門家)との見方が大勢を占める。

 台湾を含む安全保障や貿易問題だけでなく、伝統的に人権問題を重んじる民主党は、香港や新疆ウイグル自治区での中国による抑圧政策を問題視。外交通のバイデン氏は国際協調を重視してきただけに、同盟国や友好国と「包囲網」を構築して圧力を強めるのではないかとの観測が流れる。

 混乱を深めかねないのがトランプ氏の動きだ。「中国共産党は米国の脅威の中核だ。知的財産問題などを放置できない」。政権の対中最強硬派ポンペオ国務長官は、10日のテレビ出演で改めて中国を非難した。

 トランプ氏が政権を去る前に、バイデン政権の混乱も狙って新たな措置を講じる可能性は否定できない。そうなれば中国でも若い世代の反米感情がさらに広がり、バイデン氏、習氏双方にとって関係構築の大きな支障となる。

 「新冷戦」とも言われる米中対立。「デタント(緊張緩和)は望めそうにない」。両国の政府関係者や識者は、こう口をそろえた。

(北京・坂本信博、ワシントン田中伸幸)

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