課題残した日米共同訓練 「沖縄の痛み」地元痛感 宮崎・新田原基地

西日本新聞 社会面 佐伯 浩之

 航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県新富町)を拠点に行われた空自と米軍嘉手納基地(沖縄県)の日米共同訓練が5日終わり、11日に撤退を完了した。在日米軍再編に伴う訓練の一環だが、訓練の在り方を問う報道は影を潜め、米軍が基地外の民間施設に宿泊することの是非が中心だった。訓練は基地外宿泊による宮崎県内の新型コロナウイルスの感染抑止に加え、県民が米軍再編問題を考える契機になった。

 発端は、米軍が新田原基地内の専用宿舎を利用せず、宮崎市内のビジネスホテルに宿泊することが報じられたことだった。

 県が情報を知ったのは9月中旬。県内のあるホテルが県に対し、米軍から宿泊の相談があったことを連絡したため。その後、県や市が防衛省九州防衛局(福岡市)から得た詳細は、基地内施設は新型コロナの濃厚接触者を隔離する施設とするため、ビジネスホテルを使うということだった。

 新型コロナの感染抑止を最重要施策とする県や市は、訓練開始前に再三、基地内宿泊の実施を同局や防衛省に要望したが実現しなかった。米軍との直接的な交渉窓口を持たないためその声は届きにくく、そこには日米安保条約や日米地位協定の壁が横たわる。協定では基地の使用や訓練・行動の規範、経費の負担などが保障されている。

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 西日本新聞社は在日米軍司令部(東京・横田基地)に対し、訓練における基地外宿泊に踏み切った理由などを問う質問状を送り、回答を得た。

 このうち、新型コロナ感染の恐れがない場合でも基地外の宿泊を予定したかの問いに「訓練に必要な人数や、基地内での収容が可能かどうかなど多くの要因が、メンバー(米兵)が基地内にとどまるか基地外に出るかを決定するのに役立つ。基地に滞在することに制限はなく、米軍は日米地位協定に基づく移動の自由を持っている」と回答。

 さらに、9月11日、新田原基地であった計画会議で、米国からの参加者がどのように基地外に滞在するかが話し合われて合意したと英文で書かれてあった。米軍は日米地位協定に基づき、訓練や基地外宿泊を実施したことが明らかになった。

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 新田原基地では、緊急時に米軍を受け入れる施設の工事が始まっている。2006年に日米が合意した在日米軍再編ロードマップ(行程表)に基づいた措置だ。普天間飛行場(沖縄県)の能力を代替するために、緊急時には米軍が新田原基地と空自築城基地(福岡県築上町など)の施設の使用が盛り込まれた。日米地位協定による手続きを経て米軍の運用が可能になる。

 さらに、築城基地では滑走路延長が計画されている。完成後は普天間飛行場の滑走路(約2700メートル)と同じ長さになり、大型輸送機などの離着陸も可能になるという。「空自基地の米軍基地化」が足元まで近づいているとの指摘もある。

 宮崎県などは訓練を受けて、基地内宿泊や訓練計画を明記した文書の合意を目指す方針を同局に伝えている。今回の訓練は、米軍基地の軍用機の騒音など各種問題を抱える「沖縄の痛み」に、宮崎県民が無関心では済まされない現実が突きつけられた。今後、行政や住民が訓練、再編問題にどう向き合うか。重い課題が残った。

(佐伯浩之)

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