重い障害があっても…葛藤する姿描く 監督が映画「道草」に込めた思い

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 重い知的障害や自閉症、強度行動障害のある人が、ヘルパーの力を借りて自立生活を送る姿を撮ったドキュメンタリー映画「道草」。その上映と宍戸大裕(だいすけ)監督(38)=宮城県出身=のトークショーが10月、北九州市内であった。描かれたのは、当事者の暮らしぶりだけではなく、そばで見守りつつ社会の偏見や現実との間で「葛藤」する支援者や親たちの姿。撮影、編集も1人で手掛けた監督が、映画に込めた思いとは。

はみ出していこう

 ヘッドホンのような黄色い聴覚保護具を着け、大きな体でスケボーやブランコを楽しむリョースケさん。散歩の途中、何度も「たー!」と大声を上げ、たしなめるヘルパーとの掛け合いにほほ笑むヒロムさん。意思をうまく伝えられず感情を抑えられないことが多いものの、外出が大好きなユウイチローさん…。宍戸さんは重度訪問介護制度を利用し、都内でそれぞれ親元から離れて暮らす20代の男性3人を2016年から2年間、追い続けた。

 同制度は大半が公費で負担され、複数のヘルパーが交代しながら24時間見守る体制も可能だが「重い知的障害がある人が利用し、自立生活している例は非常に珍しい」と宍戸さん。「利用者が少なければ必要ないと判断され、サービスも先細りしかねない。制度を広く知ってほしいという関係者の願いに応えたかった」と今作の動機を語った。

 重度者の多くはなお、入所施設などで暮らす。前作では知的障害者の入所施設での人生を描くため、1年3カ月住み込んで撮影。50年も入所している女性は「ここを出たいといつも思っていると話していた」という。

 暮らしの選択肢は「入所」だけではない。「世間から線を引かれたような場所から、はみ出していこう」とのメッセージを込めた。

聖人君子ではない

 印象的なのは、寝泊まりし、食事を作り、常に寄り添う男性ヘルパーたちの「決して聖人君子ではないラフな雰囲気」(宍戸さん)。タトゥーを入れている人もいれば、一緒にスケボーも楽しむ人もいる。

 物を壊し、声を上げ、人に手を出すこともあるユウイチローさんのヘルパーたちが、外出をすべきか悩んだり、実際に周囲から注がれる視線への戸惑いを口にしたりする場面も。宍戸さんは他害行為をあえてクローズアップすることは避けつつ「誰だって大声を出したくなるときはあるし、自分も世間の目を見返してやるぞ、みたいな気持ちになっていた」。

 問題行動を目にすれば「怖い」と拒否されがち。ありのままの姿を知ってもらわなければ自立生活は難しく、「共に生きる」一歩は踏み出せない。支援者たちの悩みはそのまま、宍戸さん自身の葛藤でもあった。

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ