デジタル化推進 人材の育成と偏在解消を

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスの感染拡大への対応で、日本のデジタル化の遅れがあらわになった。行政サービスだけでなく、民間を含む社会全体としても先行国に見劣りする。これを挽回しようと政府がデジタル化推進の旗を振るのは無理からぬことだ。

 確かに、ウィズコロナやポストコロナの時代に経済成長するには一層のデジタル化が欠かせない。そのためにはまず、専門的な人材の育成と確保に官民協力して取り組む必要がある。

 今年の経済財政白書は、日本経済の現状と課題を分析し、新型コロナ危機を「日本経済変革のラストチャンス」と位置付けた。デジタル化への投資を加速して労働生産性が向上すれば、国際競争力も高まるとのシナリオを描いている。

 課題は明らかである。コンピューターなどのシステム設計やソフト開発といった業務をこなせるIT人材が偏在していることだ。白書によると、日本では約7割がIT産業に所属しているのに対し、米国など他の先進国は半分以下にとどまる。

 その結果として、米国ではIT人材の1割強が行政や教育など公的部門に属しているのに、日本は1%にも満たない。これこそが日本における行政のオンライン化や教育現場のIT化の遅れを招いたとみていい。

 デジタル化とは、革新的な情報通信技術を活用した業務の進め方の見直し、新たな業務領域への進出、ビジネスモデル自体の転換などの総称である。実際に使う側にも専門家がいなければ、合理的で効率的なIT投資やシステム開発は難しい。

 国内のIT企業でも人材の不足感が高まっている。白書によると、人材の「質」「量」の過不足について「全体的に不足」「おおむね不足」「一部で不足」との回答が8割を超えた。

 今後、あらゆる機器を通信でつなぐIoTやビッグデータ人工知能(AI)などの利活用が本格化すれば、専門技術を持つ高度な人材がさらに必要になる。2030年に最大79万人が不足するとの推計もある。

 個別の企業には研修などによる社員の技術習得支援が求められる。人材の流動化を見据え、職業訓練校などでの社会人の学び直し、大学や専門学校での専門教育も強化せねばならない。優秀な外国人技術者が働きやすい環境整備も不可欠だ。

 「GAFA」と呼ばれる米国の巨大IT4社はコロナ禍の中でも業績を伸ばしている。米電気自動車(EV)大手のテスラが株式の時価総額で車メーカーの世界トップに立つなど、デジタル化は産業構造を大きく変えつつある。日本も、いつまでも後れを取るわけにはいかない。

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