「不便」発行まで2カ月待ちも…福岡市の高齢者・福祉乗車券で混乱

西日本新聞 くらし面 梅本 邦明

 高齢者や障害者の外出を促すために福岡市がJRや西鉄、地下鉄などの乗車料金を一部助成する制度を巡り、新型コロナウイルスの影響で申請方法が変更され、混乱が生じている。対象者は例年、各区役所の窓口で申請していたが、本年度は郵送やオンラインでの申請に。ところが市内の70代女性から「申請から発行まで2カ月以上かかった」と西日本新聞「あなたの特命取材班」に怒りの声が届いた。何が起きたのか。

 福岡市の助成制度は70歳以上向けの「高齢者乗車券」と、障害者や被爆者などが対象の「福祉乗車券」がある。ともに2001年度に始まった。所得や障害程度による制限があり、年間最大で1万2千円分が助成される。期間は10月から翌年9月まで。毎年更新が必要で、通年で申請を受け付けている。

 高齢者乗車券はJRや西鉄で利用できるICカード、タクシー助成券など5種類から一つを選ぶ。福祉乗車券はそれらに加えて市営地下鉄の無料パス「福祉乗車証」から選ぶ。申請書はなく、区役所窓口で身分証明書や障害者手帳などを示せば職員が台帳を確認し、その場で乗車券を交付した。

 ただ、特に高齢者乗車券の対象者は約22万人。受け付けが始まる毎年9月には申請者が1日千人を超える区役所もあり、手続きに1時間以上かかることもあった。

 市は本年度、窓口での「3密」を避けるため郵送かオンラインでの申請に変更。郵送は市政だよりを切り取るか、市のホームページからダウンロードして申請書に記入し、特設した受付センターに送る。乗車券は後日、自宅に郵送される仕組みだ。

 高齢者乗車券の申請受け付けは例年より1カ月余り早い7月下旬に開始。9月末までに全対象者の6割近い約12万7千人が申請した。だが乗車券の発送は9月中旬に始めたため、早期に申請した人は1カ月以上待つことになった。オンライン申請のデータ処理のミスや記入漏れの確認などのため10月にずれ込んだ人も1千人余りいたという。

 取材班に声を寄せた女性は8月上旬にオンライン申請し、乗車券が届いたのは10月中旬。「前年度の乗車券は春までに使い切っていた。発行まで2カ月待たされて不便だった」

 そもそも申請方法が変更されたことを知らずに例年通り窓口を訪ねた高齢者も多く、区役所によっては1日約80人に上った。その場合はその場で申請書を書くか、持ち帰って記入の上、郵送してもらったという。

 林紀子・高齢福祉課長は「対象者が膨大で、記載漏れや所得確認に時間がかかった」と釈明した。

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 福祉乗車券は9月末までに約1万4千人が申請。8月初旬に発送を始めた。

 市身体障害者福祉協会によると、視覚障害者は区役所に電話して窓口の職員に申請書の代筆を頼めるが、本人確認のため結局、窓口に足を運ばざるを得なかった。また、電話で問い合わせができない聴覚障害者は不明点があれば手話通訳者が配置されている各区役所まで出向かねばならず、中にはなじみのある市ろうあ協会(同市中央区)まで遠出した人もいたという。

 市身体障害者福祉協会の清水邦之会長は「申請方法を一律にせず、障害の特性によって配慮してほしい」。埼玉県立大の朝日雅也教授(障害者福祉)は「障害の特性に応じて一つ一つの行政サービスを考えることが大切だ。それがサービスの質の向上にもつながる」と指摘した。 (梅本邦明)

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